王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 退出した彼を見届け、エメリーネもほっと息を吐く。
「エメリーネ様、舞台女優になれますよ」
 シーラがくすりと笑みをこぼせば、彼女の眼鏡も光を反射する。
「そうね。だってアルマスの中では、少し愚かな王女エメリーネができあがっていると思うの。だからいきなり、彼に反抗するのも得策ではないような気がして……」
 エメリーネが一人対抗したところで、孤立するのが目に見えている。というのもオウネル侯爵の話を聞いてしまったからだ。誰がどうアルマスと繋がっているかわからない。
 あまり敵対心を剥き出しにして、味方と引き離されても困る。それは先日の贈り物の件で学んだことでもある。
 特にシーラを奪われるのだけは避けたい。
「ねえ、シーラ。そろそろメルケルを呼んでもいいかしら?」
「そうですね。怪我の治り具合を診ていただいたほうがよろしいかと思います」
 エメリーネは苦笑した。怪我などしていないのに、診察をするメルケルが少し気の毒だった。だが、大げさに「もう痛くないわ、治ったわ」と演技すれば、彼も納得するだろう。
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