王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 それは、遠くを見ず、身近な存在に目を向けることなのかもしれない。
 エメリーネはテレジア神に礼を述べ、告解室を後にした。
「シーラ」
 待合室にいたシーラに声をかけると、彼女は本を読んで待っていたようだ。手にしていた本を、待合室の本棚へと戻す。
「何を読んでいたの?」
「ロマンス小説です。こちらの本棚、面白いんですよ。ジャンルがバラバラで……」
 エメリーネはくすりと笑った。司教の中にロマンス小説を好む者がいるのだろうか。聖堂の意外な一面に、心が軽くなった。
「エメリーネ様、またこちらに来られますよね?」
「ええ。定期的な祈りは王族にとっての義務のようなものだと思っているもの」
「そのわりには、陛下はすっかりと足が遠のきましたね」
 視線を落とすシーラの顔を見れば、国王を案じている様子がみてとれる。
「そうね。お父様はお母様を心から愛していらっしゃったから……お母様を失った悲しみがまだ癒されていないのよ……」
「そこまで一途に愛されて、王妃様も幸せだったのでしょうね」
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