王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
「王女様?」
「ベルジュ公爵。その他人行儀な呼び方、おやめになって? わたくしたち、昔は仲よくしていたではありませんか? それに、親戚でもありますし……」
 オディロンから「王女様」と呼ばれるたびに、彼との間に高い壁が存在するようでもどかしかった。
「他人に物事を頼むときは、自分の態度も改めるべきでは?」
「え?」
 エメリーネは驚き、オディロンを見上げた。彼もエメリーネを見つめ、歩を止める。二人の視線が絡み合い、時間が一瞬止まったように感じられた。
「……オディロンだ。他に誰もいないときは、俺のことをそう呼べ。エメリーネ」
 昔のように名を呼ばれ、エメリーネの鼓動がドクンと跳ねた。小さく頷くと、胸の奥に懐かしいあたたかさが広がるのを感じた。
 オディロンが案内したのは、庭に面した明るいサロンである。大きな窓からは、手入れの行き届いた庭園が一望でき、色とりどりの花が風に揺れ、太陽の光を浴びて輝いていた。
「素敵な庭ね」
「母が生きていたときほどではないがな」
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