王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 オディロンの声から、ほのかな寂しさが感じ取れた。彼の母は花を愛し、自ら庭の手入れをしていたという。
 エメリーネはふと、幼い頃にその庭で遊んだ記憶を思い出した。
 席に着くと、オディロンがさりげなく椅子を引いた。
「ここに来るのも、いつ以来かしら?」
「さあな。少なくとも、俺が爵位を継いでからは来ていないだろう?」
 オディロンが言うように、以前は母親と一緒にここを訪れた記憶しかない。
「そうですね。お互い、変わってしまいましたから……」
 侍女が紅茶と菓子を運び、静かに部屋を去る。エメリーネは窓越しの花を見やり、口を開いた。
「もしかして、お見舞いの花はこちらの?」
「あぁ、そうだな。これだけあるからな。庭師に適当にお願いしたが」
「最後の一言は余計かと?」
 エメリーネは笑いながら紅茶を手に取った。芳しい香りとほどよい渋みが、心を落ち着ける。
「そういえば、贈り物の目録を確認して気づいたのですが」
< 127 / 154 >

この作品をシェア

pagetop