王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
「そ、そんな昔のこと、覚えておりません」
そう口にしたが、それは嘘。
オディロンの言葉で、あのときのことがまざまざと思い出された。
当時、ベルジュ公爵邸の庭園は、子どもの背丈ほどの花で溢れていた。
その花の中に紛れ込んでしまい、エメリーネは自分のいる場所がわからなくなってしまったのだ。見まわすかぎり、花、花、花。上を見上げれば青い空が広がっているが、周囲は花だらけ。花の甘い香りも、方向感覚を狂わせた。
泣きながら両親を呼び、オディロンの名を叫んだエメリーネを見つけてくれたのが彼だった。
ふん、と鼻から息を吐いたオディロンは、エメリーネの気持ちを見透かすかのように、紅茶を一口飲んだ。
「だが、エメリーネ王女は、観察眼を身につけたようだ。だが、君の立場は危ういものだ」
「はい。それは自分でも存じ上げております。今、王政の関係者は、アルマスの手が伸びています」
アルマスの名に、オディロンのこめかみがひくりと反応した。
エメリーネは静かに言葉を続ける。
そう口にしたが、それは嘘。
オディロンの言葉で、あのときのことがまざまざと思い出された。
当時、ベルジュ公爵邸の庭園は、子どもの背丈ほどの花で溢れていた。
その花の中に紛れ込んでしまい、エメリーネは自分のいる場所がわからなくなってしまったのだ。見まわすかぎり、花、花、花。上を見上げれば青い空が広がっているが、周囲は花だらけ。花の甘い香りも、方向感覚を狂わせた。
泣きながら両親を呼び、オディロンの名を叫んだエメリーネを見つけてくれたのが彼だった。
ふん、と鼻から息を吐いたオディロンは、エメリーネの気持ちを見透かすかのように、紅茶を一口飲んだ。
「だが、エメリーネ王女は、観察眼を身につけたようだ。だが、君の立場は危ういものだ」
「はい。それは自分でも存じ上げております。今、王政の関係者は、アルマスの手が伸びています」
アルマスの名に、オディロンのこめかみがひくりと反応した。
エメリーネは静かに言葉を続ける。