王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 正面の扉から中に入り、静かに聖堂の奥へと足を進める。テレジア神の石像の前で膝をついて祈りを捧げてから、音も立てずに告解室へと入った。
 この間、シーラは待合室で読書をして待っているのだが、彼女はこのささやかな時間を楽しみにしているらしい。
「迷える同士よ。今日はどのような話をテレジア神に伝えたいのでしょうか」
 小さな窓のついた隔たりの向こうから聞こえるベルトルトの声に、エメリーネは小さく息をつく。
「テレジア神の教えに従い、わたくしの補佐官となる者を選定しております。他の二人は決まりそうなのですが、味方になる者が決まりそうにありません。いえ、その者を推薦していただくためには条件があると言われたのです」
「どのような条件でしょう?」
「それは……わたくしが、ベルジュ公爵と結婚すること……」
 エメリーネが喉の奥から言葉を絞り出すと、狭い部屋には沈黙が落ちた。
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