王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
「何を?」
「アルマス・タルボット宰相閣下です」
 右手をぎっと握りしめたエレナはそれを振り回しながら声を大きくした。
「あの人のせいで、私は軍にいづらくなったんです。何かあるとすぐに『これだから女は』って。あの人は第二師団、私は第一師団。別に私はあの人の部下ではなく、ベルジュ公爵の部下なんですよ。ほんと、何度、あの人の食べ物に毒を仕込んでやろうと思ったことか……でも、証拠が見つかればベルジュ公爵に迷惑をかけると思って耐えていたんですけど」
 エリナは個性が強いとオディロンも言っていたが、ここまでアルマスに対する敵意をはっきり口にする者は珍しい。
「リナ、それを他の人には言っていないわよね? その、アルマスに毒をって……」
「言ってませんよ。あそこで宰相閣下を話題にしたら、どこでどう話が湾曲して伝わるかわかりませんから」
「でも、第一師団の師団長はベルジュ公爵でしょ?」
「ええ、でも私たちは好きでそこに配属されているわけではありませんから。配属先がたまたま第一師団だった。私はそんな感じですね。いや、もしかしたら宰相閣下が嫌がらせで、私を第一師団に配属させたのかもしれませんが。使えないお荷物の女性軍人は、第一師団にって。第一師団って、他よりも女性軍人の数が多いんですよ」
 いくら訓練を重ねても、体力的に女性のほうが男性よりも劣ってしまう。その体力の劣る女性を多めに第一師団に配属させることで、第一師団の戦力を削いでいたと考えたら――。
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