王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
3.
着替えを済ませたエメリーネは、シーラを連れてアルマスの執務室へと足を向ける。カツカツと回廊に響く足音が、時を切り刻む音のようにも聞こえた。
シーラが扉を叩き、返事があるのをじっと待つ。
「どうぞ……」
扉を開けたのは、アルマスの秘書官だ。のっぺりとした顔でニコリともせず、彼が中へと促した。この秘書官には灰色の空気がまとわりついている。空気の色がはっきりと見えた。
(何かしら……?)
そう思いながらも、考えるより先にアルマスが声をかけてきた。
「これはこれは、エメリーネ王女。わざわざご足労いただきまして、ありがとうございます」
エメリーネの姿を見つけたアルマスが、執務席から立ち上がり、大げさに両手を広げて近づいてくる。茶色の髪を滑らかに後ろに撫でつけ、ぎろりとエメリーネに向ける視線は、まるで爬虫類のよう。そしてなぜかアルマスの周辺の空気が淀んでいた。
いや、彼が黒い空気を放っているように見えるのだ。
エメリーネは見間違いかと思い、瞬きをしてみたが、やはりアルマスは黒い空気をまとったままで、それが消えることはなかった。
そんなアルマスだが、夜会では女性に囲まれている姿もよく見かけると、誰かが言っていた。しかしエメリーネにはその魅力が理解できない。
シーラが扉を叩き、返事があるのをじっと待つ。
「どうぞ……」
扉を開けたのは、アルマスの秘書官だ。のっぺりとした顔でニコリともせず、彼が中へと促した。この秘書官には灰色の空気がまとわりついている。空気の色がはっきりと見えた。
(何かしら……?)
そう思いながらも、考えるより先にアルマスが声をかけてきた。
「これはこれは、エメリーネ王女。わざわざご足労いただきまして、ありがとうございます」
エメリーネの姿を見つけたアルマスが、執務席から立ち上がり、大げさに両手を広げて近づいてくる。茶色の髪を滑らかに後ろに撫でつけ、ぎろりとエメリーネに向ける視線は、まるで爬虫類のよう。そしてなぜかアルマスの周辺の空気が淀んでいた。
いや、彼が黒い空気を放っているように見えるのだ。
エメリーネは見間違いかと思い、瞬きをしてみたが、やはりアルマスは黒い空気をまとったままで、それが消えることはなかった。
そんなアルマスだが、夜会では女性に囲まれている姿もよく見かけると、誰かが言っていた。しかしエメリーネにはその魅力が理解できない。