王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
28.
 エメリーネも彼の隣に黙って膝をついたが、両手を組む前に、隣にいるオディロンにチラリと視線を向けてみる。しかし彼も真剣に祈っている最中のようで、エメリーネの視線に反応を示さない。
 石像を真っすぐ見上げてから、エメリーネも静かに両手を組んだ。
「……エリナ・ナウマンはどうだ?」
 エメリーネの祈りが終わりそうな頃を見計らって、オディロンが声をかけてきたが、彼は祈りの姿勢を崩さない。
「えぇ。とても気さくな方ですね。ただわたくしに足りないものをずけずけと言うので、まるであなたみたい」
 エメリーネも祈りの姿のまま答えた。静寂のなか、二人の声はぼそぼそと響く。
「俺みたい、だと?」
「えぇ……リナがいると、あなたが近くにいるようでとても心強いです。それから、貴族名鑑もありがとうございます」
 オディロンがすっと立ち上がる気配を感じたが、エメリーネはまだ手を組んだままだ。
「君はこの後、どうする予定だ?」
「テレジア神に教えを乞います」
 エメリーネの答えを聞いたオディロンは、音もなくその場を立ち去った。 
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