王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
「それから……」
 エメリーネは、茶葉の入った缶を取り出し、それを小さな窓の前に置いた。
「お父様は毎日、このお茶を飲んでいたようです。あなたなら調べられるでしょう?」
 二人きりの空間に、ぴんと張り詰めた沈黙が生まれた。
 オディロンであれば、この茶葉を詳しく調べてくれる。茶葉の出所、そして何が含まれているのか。彼なら、容易く調べられるはずだ。
「エメリーネ王女はご存じか?」
 彼がエメリーネをわざわざ王女と呼ぶのは揶揄うとき、もしくは本当に王女として敬意を示すとき。
「この世には、俺たちが知らないような毒が溢れているらしい」
 そして薬は毒に、毒は薬になるならば、エメリーネの知らぬ毒などたくさんあるにちがいない。
「アルマス・タルボット宰相閣下は、西側に鉱山を所有しているらしいな」
 高位貴族となれば、山や運河を所有している者も珍しくはない。
「どうやらその鉱山では、珍しい鉱物が採れるようだ。仕事のないような者は、そこで作業員として働いている」
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