王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
『これだけ証拠が見つかれば、アルマスを今の地位から引きずり下ろせるかしら?』
 エメリーネの発言に、オディロンが空気を震わせた。くくく……と笑い声が聞こえてくる。
『世間知らずの王女様は、なかなか勇敢になったな』
『だって……あなたが頼れと言ったのよ? わたくしの力だけでは無理よ。もちろん、あなたにも手伝ってもらうわ』
 小さな窓の向こうで、オディロンは小さく笑っていたようだが――。
「お父様。先日、わたくしの結婚について相談しましたでしょう?」
 カップを持つ父の手がピクリと震えた。答えを焦らすように、ゆっくりお茶を飲み、静かにカップを戻す。
「エメリーネも社交デビューをした。となれば、婚約の話が出てもおかしくはないな」
 幼いころから家同士の縁で婚約者が決まっている者も多いが、王族はその相手にはそれなりの条件を求めるため、社交の場に立つようになってから決めることが慣例であった。父も母と出会ったのは、政務に携わるようになってジオグ国を訪れたとき。
「お父様、わたくしにぴったりな結婚相手を考えましたの」
 両手をパチンと叩いて、まるで名案だと言うような素振りを見せる。
「ほう? エメリーネからそう言うとは思ってもいなかった。して、その相手は?」
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