王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 コンストも慣れたもので、それだけでエメリーネが定期的に届けてくれるシナモンティーだとわかる。
 お茶の用意をし終えたコンストは、黙ってアルマスの机の上にカップを置いた。香辛料と甘さが混じった独特の香りが、室内に漂う。
(エメリーネ王女にふさわしいのはこの私……あの野蛮な男ではない……)
 だからエメリーネだって、定期的に茶葉を届けてくれるのだ。
 ――アルマスには健康でいてほしいもの。
 恥ずかしそうにはにかんだエメリーネだからこそ、補佐官を使ってお茶を贈ってくれるのだろう。
(エメリーネ王女は、控えめなところもあるからな……)
 だからエメリーネは人前に出ることは滅多になかった。むしろ他人との接触させないようにしてきたのだから仕方あるまい。
 アルマスは、微かに震える手でカップを持ち、口に近づけた。刺激のある味が、口の中に広がっていく。
(まずは、私とエメリーネ王女の仲を周知させる必要がある)
 エメリーネと最も近しい立場にあると、アルマスは自負している。エメリーネのなつきようを見れば、誰だってそう思うだろう。
 それなのに、なぜ国王はオディロンをエメリーネの婚約者として名をあげたのか。
 怒りによって満たされる胸も、エメリーネのお茶を飲めば、それもすっと消えていく。
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