王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
「はい。我が国ではテレジア教を国教としておりますので。わたくしにとって、ここは遊び場のようなところです」
「なるほど。ガレッティ国では、本当にテレジア神が親しまれているのですね」
「そうですね。神頼みという言葉もあるくらいですから」
 貧困の足音はすぐそばまでやってきている。特に商売をしている者なんかは、その気配を顕著に感じ取っているにちがいない。だからこそ、テレジア神に祈りを捧げにくるのだ。神にすがってでも、今の生活をよくしたいと。
 三十分ほど過ぎた頃、聖堂からぱたりと人の姿が消えた。
「へぇ……これは見事ですね」
「はい、この時間帯はわたくしたち王族のための祈りの時間です。レジス王太子もいかがですか?」
「僕は、真面目な信者ではないのですが……せっかくの機会なので、祈らせていただきます」
 祈りを捧げた後は、告解室でテレジア神と話をするのがいつもの流れだと説明すると「では、僕にもテレジア神と話をさせてください」と乗り気であった。
 ジオグ国には告解室がないのかと尋ねれば「ですから、我が国では王族とテレジア教は独立しているんです。告解室で何か言えば、それが王族にとって不利な情報にもなり得るわけです。テレジア教の前では決して弱みは見せられません。だから父は僕にレジスという名をつけたのです。テレジア神に負けないようにと、似たような名前を」
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