王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 衝立の向こうのテレジア神は、正体を隠す様子もない。
「……そうですね。例のクロック公爵夫人の首飾りです。お母様が似たようなものをもっていたというあの話ですが……」
 間違いなくあれは母妃のものだろうと、エメリーネは答えた。
「やはりな。では、俺のほうからもいくつか伝えたいことがある。まず、王妃の宝飾品をアルマスが勝手に売っていた件。それはイニドロス国へ流れていた」
 イニドロス国は、国教の街リマンドに接する隣国だ。リマンドの街を治めるコソラ辺境伯は、アルマス派の一人。そこを通じてイニドロス国へ物を流すのは難しい話ではない。
「そして面白いことに、クロック公爵夫妻がイニドロス国に視察へ行ったときに、例の首飾りを購入したらしい」
「それは、あなたの優秀な部下たちが調べた結果かしら?」
 エメリーネなりの冗談のつもりだったのに、軽く流された。
「クロック公爵には、あの宝石を手に入れる理由に後ろめたいことなどなかったはずだろう? 珍しいものだからどこで買ったかを尋ねたら、すぐに教えてくれたよ」
 やはりレジスが言ったように、珍しい宝石はエメリーネの前から消え、またぐるりとまわってエメリーネの前に戻ってきたのだ。
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