王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 みるみるうちにアルマスの顔色は悪くなり、蛇のような頭を持つ黒いオーラはオディロンの目の前まで襲いかかる。しかし、オディロンは声も発さないし表情も崩さない。
 そして最後に、オディロンはゆっくり立ち上がった。
 おそらく三分の二ほどの人間は、エメリーネとオディロンを認めただろう。聖職者であるデオバルトも堂々と立っている。
 残る三分の一は、未だアルマスに弱みを握られている人間で、彼らは下を向いて顔を逸らしていた。
「認めない。こんな結果、私は認めないぞ!」
 拳をにぎりしめたアルマスがわなわなと身体を震わせる。
「嘘だ。おまえたち、騙されているのだ。そのベルジュ公爵に!」
 オディロンに向かって、ビシッと指をつきつけるアルマスだが、その指先はぷるぷると小刻みに震えている。
「見苦しいですよ」
 第三者の声が割って入り、皆、その声の主へ顔を向ける。
 レジスだった。
「この国の議会の採決は多数決。今も過半数以上の者が認めたのですから、あなた一人の意見で覆るはずがないでしょう。いい加減、二人を認めたらどうですか?」
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