王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
5.
「お父様」
 主役のエメリーネが最初に踊らなければ、他の出席者は踊れない。そしてエメリーネのファーストダンスの相手は父王であり、それが慣例である。
「こうしてエメリーネと踊れる日がやってくるとはな。月日の流れは早いものだ」
 手を取って広間の真ん中へと進んだ二人だが、少し父王の手がわずかに震えているのに心が痛んだ。
 エメリーネがくるりと回るたび、純白のドレスが大きく広がり、シャンデリアの光を受けてきらめく。フリルの波が揺れ、まるで光の花が咲くよう。
 美しいダンスに誰もが見惚れ、音楽が鳴り止んだときにはため息と拍手、歓声があふれかえっていた。
「わたくしもお父様とこうして踊れる日を迎えることができて、感無量です」
 給仕から飲み物を受け取ったエメリーネは、葡萄酒の杯を父王に手渡した。
「久しぶりに彼らと話をしてくるよ」
 そう言って国王が向かった先は、テレジア教の大司祭たちが白いローブを揺らして集う一角。そこは黄色や緑色の空気が漂い、穏やかな雰囲気に包まれている。
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