王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 今回はそれを断固として拒否したい。
 誰かに助けを求めるかのように、エメリーネは素早く視線を動かす。
 父王の側にはベルトルトがいた。司祭のローブをまとい、金色の髪がさらりと揺れる彼は、にこやかに相槌を打っている。
 そんな彼をじっと見つめると、ベルトルトもエメリーネの眼差しに気づいたようだ。
 その視線がエメリーネと交錯した瞬間、ねっとりとした視線を感じた。
 はっとして振り返ると、アルマスが不気味な笑みを浮かべて近づいてくる。黒い空気が蛇のように這い、彼の意図を際立たせる。
(もしかして、あれはオーラと呼ばれる人のエネルギー? 欲望なのかしら。一度死に時間が巻き戻ったわたくしに、テレジア神が与えてくれた力……?)
 だから、色のついた空気が見えるようになったのだろうか。一度死んだエメリーネであり、しかも時間が五年前にまで巻き戻っている。そのため不思議な力を身につけたとしても、さほど驚きはしない。むしろ、そうでもしないと二度目の人生の意味もないだろう。
(オーラが見える人と見えない人。人によって色が違うというのはわかったけれど……その違いはよくわからないわ。それよりも……)
 真っ黒いアルマスが近づいてくるほうが問題である。彼は確実にエメリーネをダンスに誘う。
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