王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
6.
(どうして、彼がここに……?)
 エメリーネの心が大きく震えた。
 一度目の人生では、オディロンはエメリーネの誕生日パーティーに出席しなかった。
 国境のリマンドの街に蛮族が押し寄せ、田畑を荒らし、店を襲い、子どもや若い女性たちを連れ去ろうとしたのだ。その蛮族退治のために派遣されたのが、オディロン・ベルジュ公爵率いる国軍の第一師団だった。ガレッティ国では各公爵が国軍の師団を統率しており、私兵を持つことは許されていない。
 国の命令により師団を動かす際、ほとんどの公爵は代理の師団長を任命し、自らは安全な城に留まる。しかし、オディロンだけは違った。彼は常に戦場の最前線に立ち、剣を握り、血と汗にまみれた。
 だからあのときも、彼が反乱軍を率いて先頭に立つことを望んだのだが――。
「オディロン・ベルジュ公爵……あなた、リマンドの街に行っていたはずでは……」
 エメリーネの声は驚きと疑念によって微かに震えていた。
「えぇ。ですが、そちらはすでに解決してあります。他の者はこれから帰還いたしますが、私だけ、このパーティーに間に合うように先に戻ってまいりました」
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