王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 そこでエメリーネはくるりと回され、ドレスの裾が花びらのように広がる。会場からは感嘆の声がもれる。
 だが、一瞬、エメリーネの心はざわついた。
 一度目の人生で、彼の腕の中で息絶えた記憶が、脳裏をよぎったのだ。燃え盛る王城、血と煙の匂い。
 それはアルマスに見えたオーラとは異なるものだった。
(どうしてオディロンのオーラが見えないの?)
 オディロンからは、色のついた空気が見えない。
「それにはお答えいたしかねます。だって、あなたが敵か味方かわかりませんもの」
 エメリーネはふふっと小悪魔的な微笑を浮かべ、動揺を隠す。
「なるほど。王女様の敵が何を指すかわからないが……」
 彼の赤褐色の目が、鋭くエメリーネを射貫く。
 瞬間、彼の後ろに焼け落ちる王城の幻影が浮かんだ。一度目の人生、エメリーネはこの場所で、彼の腕の中で死んだ。
 音楽に身を任せているエメリーネの背筋に、冷たい汗が流れる。
「どうした? 考え事か?」
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