王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
8.
 エメリーネの誕生日パーティーは、無事に終わった。華やかな会場でのダンスの時間、足を痛めて踊れなかったが、それでもエメリーネは優雅な振る舞いは崩さなかった。
 父王の隣の席に腰掛け、静かに微笑を浮かべ続けている姿に、貴族たちも引き寄せられるように集まってきた。エメリーネはそこにいるだけで、会場を魅了したのだ。
 退出する瞬間も、人々の視線がエメリーネを追いかける。オディロンは責任を負うかのように、エメリーネをそっと抱き上げた。それはまるで彼がエメリーネの足そのものになったかのように。
 ――お似合いの二人だわ……。
 そんな声もちらほらとエメリーネの耳に届いてきたが、聞こえぬ振りをしてオディロンに身体を預ける。
 その様子を鋭く睨みつけていたのは、もちろんアルマスだ。彼の瞳の奥には嫉妬と憎悪が燃えていた。背後から見える真っ黒いオーラは、今にも彼を呑み込んでしまいそうなほど大きく揺らめいていた。
 だがエメリーネは、それを気にも留めず、オディロンの手で部屋まで戻ってきた。
 自室に戻ったエメリーネは、侍女たちの手を借りて衣装を脱ぎ、湯浴みをすませ、やっと一息ついた。
< 50 / 136 >

この作品をシェア

pagetop