王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 口元に寄せたカップを傾け、カモミールティーをこくりと一口飲んだ。爽やかな香りと、はちみつの甘さが口の中に広がる。
 エメリーネがカモミールティーを寝る前に飲む習慣を持ち始めたのは約一年前。王妃を失い、深い悲しみにいたときに、ベルトルトが安眠の効果があるとすすめてくれたのがきっかけだった。各国の聖職者たちと繋がりのあるベルトルトは、国外の文化にも長けている。
 そんな彼は、一年前の不安定なエメリーネを支えてくれた。聖職者でかつエメリーネにとって兄のような存在のベルトルトは、吐き出したいことがあればテレジア神が聞いてくれると、聖堂の告解室を教えてくれた。
 あれ以降、エメリーネはシーラを連れて聖堂へ足を運ぶことも増えた。告解室では罪の告白ではなく、母親との思い出を語るほうが多い。
 ステンドグラスの光が輝く荘厳な空間で、テレジア神は黙って話を聞き、故人を想う涙を肯定してくれた。
 一年前に王妃が亡くなり、すっかりと力をなくした父王、そして不安定な王女エメリーネ。だから宰相アルマスも王権を意のままに操ろうと動き始めたのだ。
 もちろん父王はそれに気づいていないし、エメリーネだって理解していない。五年後から戻ってきた今のエメリーネだからこそ、アルマスの企みを知っているだけで。
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