王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
「あなたの情けない姿など見たくありません。わたくしを殺せないと言うのであれば、わたくしは自ら死を選びます」
 これ以上、彼と言葉を交わせば、決意が鈍りそうだった。オディロンには真実を知ってもらいたいという反面、知られてはならないという葛藤がある。
 だからその前に、エメリーネは行動に移すしかない。
「エメリーネ!」
 彼が大きく踏み出したのはわかったが、それよりも先にエメリーネは、短剣で自らの首を切り裂いた。
 目の前が真っ赤に染まり、身体からは力が抜けていく。
 崩れ落ちるエメリーネの身体を支えたのはオディロンだ。
「……この国を……頼みます……」
 冷えゆく身体を熱く支える彼の腕の中で、最期の願いを伝える。
「エメリーネ!!」
 エメリーネの名を全身で叫ぶオディロンの姿がかすんでいき、その声すら聞こえなくなっていく。
「……なぜ、真実を話さない。おまえは――」
< 7 / 29 >

この作品をシェア

pagetop