王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 ――女は少し愚かなほうが扱いやすい。
 アルマスは常々そう考えていた。だからこそ王妃の存在は、彼にとって厄介極まりないもの。
 王妃は国王を超えるほどの知性を持っていたが、決しておごり昂ぶることなく、相手に気づかせぬようそっと助言し、手柄は相手に譲る。
 これは本当に才気あふれるものだけができる芸当だった。
 そのため排除するしかなかった。
 アルマスは、二年前から少しずつ王妃の飲食物に毒を盛っていた。それも並みの毒ではない。自ら所有する鉱山で採れた鉱物に、珍しい金属が含まれていることがわかった。その成分を分析させたところ、人体に悪影響を及ぼす物質が含まれていることまで。
 彼女の飲む紅茶にほんのわずかずつ、粉を落とし続けた。じわじわと身体を蝕み、自由を奪っていくように。
 ゆっくりと衰弱していった王妃は、昨年ついに力尽き、静かに命の灯を消した。
 王妃を深く愛していた国王は、彼女の死をきっかけに気力を失い、政務のすべてをアルマスに預けるようになった。
 何もかもがアルマスの思惑どおりだった。
 アルマスにとって必要なのは、ただの飾りにすぎない王。自分で何も判断できない、間抜けな王。
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