王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 身体も大きく、少し粗野にも見えるオディロンだが、その動きは意外なほど洗練されている。彼もまた公爵家の出であり、エメリーネの次に王位継承権を持つ男なのだ。
「あなたが淹れてくれたお茶なんて、高価すぎて飲めないわね」
「そうだ、貴重なお茶だぞ? だからありがたく味わえ」
 ああ言えばこう言う。そのやりとりが妙に懐かしく思える。
 幼いころ、オディロンはよくエメリーネのことを妹のように可愛がってくれていた。
 だが、それも今から七年前。オディロンの両親が亡くなり、彼が十四歳で爵位を継いでからは、二人の間に自然と距離ができてしまった。それだけオディロンが忙しくなったのだ。
「本当にありがたくて、涙が出てきそうだわ。いただくわね」
 エメリーネはカップを手に取り、紅茶の香りをそっと吸い込んだ。一口飲むと、悔しいことに、驚くほど美味だった。
「どうだ?」
 自信に満ちたオディロンの顔を見るのが、なんとも癪にさわる。
「……まあまあね」
 悔しさをごまかすように、エメリーネはそっけなくそう答えるしかなかった。
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