偽装結婚の相手は疑い深い脳外科医でした
遥人は今日一番の不機嫌な表情を浮かべている。
不機嫌というだけならまだしも、あからさまな不快感。
まるで重罪を犯した人を見るような目で咲良を見ている。
――その気持ち、わからなくもない。
咲良は小さく頷いた。
大切な身内がよくわからない相手から傷つけられないか、心配しているのだ。
咲良自身、家を格安の家賃で貸してもらえたり、法律関係の知識も資格もないのに社員として雇ってもらえたり。
ありがたいとは思うものの、彩子の人のよさが危うく思えて心配になることも多い。
「そんな小難しい顔をしてたら患者さんの病気だって治らないわよ」
今も遥人の心配などよそに、ご機嫌だ。
「わかってるよ。それより、家を譲るとか簡単に口にするべきじゃない。また妙な奴に目をつけられたらどうするんだ」
「そのことなら反省してるから大丈夫だって言ってるのに。私だって四十二歳のいい大人。そうそう何回もだまされるわけないでしょ」
「赤い顔をした酔っ払いがなに言ってるんだよ」
遥人が間を置かず切り返す。
「だまされる? 彩子さん、なにかあったんですか?」
まさか仕事でトラブルを抱えているのだろうか。
「もう大丈夫!」
彩子はすかさずピースサインを作り、あっけらかんと答えた。
「結局遥人が助けてくれて被害があったわけじゃないし。今は気にしてないから」
「気にしろよ」
遥人は脱力し、椅子の背に体を預けた。
「それにね、咲良ちゃんを疑うようなことは言わないで。遥人だって美味しそうにハンバーグを食べてたくせに」
「それとこれとは話が違う。とりあえず、この話は酔いが覚めてからにしよう。酒が入ると調子が狂うんだ」
――同感。
咲良は心の中で頷いた。
「だけど、お酒が飲めるって羨ましいです。私はすぐに顔が赤くなって眠くなるし」
不機嫌というだけならまだしも、あからさまな不快感。
まるで重罪を犯した人を見るような目で咲良を見ている。
――その気持ち、わからなくもない。
咲良は小さく頷いた。
大切な身内がよくわからない相手から傷つけられないか、心配しているのだ。
咲良自身、家を格安の家賃で貸してもらえたり、法律関係の知識も資格もないのに社員として雇ってもらえたり。
ありがたいとは思うものの、彩子の人のよさが危うく思えて心配になることも多い。
「そんな小難しい顔をしてたら患者さんの病気だって治らないわよ」
今も遥人の心配などよそに、ご機嫌だ。
「わかってるよ。それより、家を譲るとか簡単に口にするべきじゃない。また妙な奴に目をつけられたらどうするんだ」
「そのことなら反省してるから大丈夫だって言ってるのに。私だって四十二歳のいい大人。そうそう何回もだまされるわけないでしょ」
「赤い顔をした酔っ払いがなに言ってるんだよ」
遥人が間を置かず切り返す。
「だまされる? 彩子さん、なにかあったんですか?」
まさか仕事でトラブルを抱えているのだろうか。
「もう大丈夫!」
彩子はすかさずピースサインを作り、あっけらかんと答えた。
「結局遥人が助けてくれて被害があったわけじゃないし。今は気にしてないから」
「気にしろよ」
遥人は脱力し、椅子の背に体を預けた。
「それにね、咲良ちゃんを疑うようなことは言わないで。遥人だって美味しそうにハンバーグを食べてたくせに」
「それとこれとは話が違う。とりあえず、この話は酔いが覚めてからにしよう。酒が入ると調子が狂うんだ」
――同感。
咲良は心の中で頷いた。
「だけど、お酒が飲めるって羨ましいです。私はすぐに顔が赤くなって眠くなるし」