魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
樫崎先生は、細く描いた眉をひそめた。

校内で、感染が広がる危険性を考えたのだろう。

漆原は研究室のソファーにぐったりと倒れ込んで、朝から咳きこんでいた矢原先生の姿を思い出した。

「でも、漆原先生が代わりに出てくださっただけでも、助かりました。
それに受験生が、残り一人だけだし」

樫崎先生は書類を胸に抱え、ガチョウを思わせる姿でせわしなく歩く。

その後を、長身の漆原が大型犬のように、ゆっくりついていった。

吹きっさらしの渡り廊下を歩くと、冷気の中に雪の匂い。

「これから、雪が降りそうですね」

漆原は、灰色の空を見上げて言った。

この大学は、新館と別館に分かれている。

新館は新築で7階建てビル、旧館は3階建ての石造り、つたが絡まる大正ロマンの歴史的な建築物だ。

そう言えば聞こえはいいが、窓からは隙間風が入り、断熱材のない壁は冷暖房が効かず、教育環境はすこぶる悪い。

「本当に冷え込みますね。早く面接をしてしまいましょう。
こっちの教室は暖房も利かないし、待機している受験生の生徒さんも風邪をひいてしまうわ」

樫崎先生は、気配りを口にしながら、無駄に広い教室の引き戸を開けた。

北向きの窓からの光は薄暗く、人気のない陰鬱な冷気が足元から昇ってくる。

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