魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
「面接する生徒さんの、調査書とか志願理由書を見せていただけますか?」
漆原が、樫崎先生に声をかけると、彼女は手早く机の上に書類を並べ、その1枚を指さした。
「心理学希望の子ですね。
親の仕事で小さい時から、海外を転々としてきた帰国子女です。
高校1年の時に日本に帰ってきて、その後は不登校ぎみですね。
きっと学校になじめなかったのでしょう」
漆原は、調査書の欠席日数の欄を確認した。
1年次は空白。2年、3年次は50日以上欠席している。
樫崎先生は手をすり合わせて、軽く足踏みをして冷気を払うしぐさをした。
「さぁ、早く面接をやりましょう。ストーブがついているけど、凍えてしまいそうだわ」
「わかりました。よろしくお願いします」
漆原は、書類を手に軽く頭を下げた。
実質の面接官は樫崎先生であり、ベテランなので彼女にまかせておけば問題はない。
「どーーぞーー!!お入りくださいーー!!」
小柄な体から、ピッチの高い声が教室に響いた。
ガラリ・・・
重い引き戸が静かに開き、黒髪の頭が垂れているのが見えた。
「受験番号・・607番。荒木沙羅です」
頭を下げたまま、貞子スタイルで、そのまま動かない。
「はい、こんにちは。どうぞ、こちらの椅子に座ってね」
「はい・・」
女子生徒はくるりと後ろをむいて、丁寧に引き戸を閉めた。
「失礼します」
生徒は漆原と視線を交わす事無く、樫崎先生の方を向いて座った。