魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
「グルシア、座りたまえ。だから天使長である君に頼んでいる。
君が天界で一番魔界、魔界耐性が強い。

その上で、アレクサンドラの処遇を判断して欲しい」

「でも、どうやって・・・私たち、特に魔界と接点のある者がアレクサンドラに触れれば、その部分は火傷しますよね。浄火の作用で」

そう言いながら、グルシアは考え込んでいた。

いくら天使といえども、日常的に魔界やニンゲンと接していれば、それなりに邪悪さの影響を受ける。

「無理に徴(しるし)をつけようとすれば、最悪、双方とも浄火の炎で焼き殺されてしまうだろう」

長老は情報を付け足した。

「アレクサンドラは、異端だ。
我々のわからない、何かがあの魔女にあるのかもしれない」

長老はそう言って、目の前の分厚い本をパタンと音を立てて閉じた。

「君とサリエルが大魔女について、一番よく情報を集めているからな。
この件については適任だと、私が上に推薦しておいたのだ。
それにサリエルから、彼女を特別観察対象にしたいと要望が出ている」

長老は長い眉毛の下で見え隠れする、狡猾な目でグルシアを見た。

「さぁ、私はこれから会議だ」

長老派<去れ>というように片手を振った。

グルシアは頭を下げると、天使長の位階を示す月桂樹の金のふち飾りを翻して、廊下に出た。

天使長はニンゲン界で言えば、中間管理職なので、上と下との板挟みになる。

怒りのあまり、速足になっていたのだが、神殿回廊の中庭、百合の花が満開に咲いているのが目に入った。

大ぶりの白百合が特に強い香りを放ち、その存在感を示している。

グルシアは立ち止まり、露で重たげな百合の花弁に触れた。

邪悪な魔女が、純潔の百合だと・・信じられないが。

とんでもないレアケース、研究対象として価値があるとサリエルが言うのも当然だろう。

特に大魔女の情報は少ない。

この仕事は、それなりに意義があることだ。

気持ちを切り替えるように、グルシアは指を鳴らした。

「サリエル、例の案件だ。すぐに来てくれ」

あの爺ぃのほうが、よっぽど狡猾で腹黒いぜ。

面倒くさい仕事を、俺に押し付けやがって。

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