魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
漆原は志望理由書から顔を上げ、その生徒を見た時・・・教室の空気が微かに揺らいだ。

何かの威圧か波動か、一瞬だが、めまいを感じた。

荒木沙羅。

背筋をピンと伸ばして座ったが、手に持つハンカチがぎゅっと握られ、緊張しているのがわかる。

しかも能面のように、表情が見えない。

その肌は、冷たい白蝋のように血の気がなく、唇だけが紅をさしたように紅い。

瞳は硬質な輝きを持つエメラルドグリーン・・だが、すぐに伏せられた。

絶対零度の女王。

どこか妖艶さを感じさせるオーラを放つ。

漆原は、荒木沙羅から視線を外すことができなかった。

樫崎先生は教育者特有の笑顔で、緊張を解くように話しかけた。

「荒木さんですね。それでは本校を希望した理由について、お話をしていただけますか?」

荒木沙羅は手に握ったハンカチを見つめていたが、ようやく顔を上げた。

「私は・・高校1年の時に日本に来ました」

声は低めだが、はっきりと響く。

「日本語が得意でなくて、みんなから変な日本語だと、学校でからかわれました」

樫崎先生は大きくうなずき、ねぎらいの言葉をかけた。

「そう、ではこちらの生活に慣れるのに、随分苦労なさったのね」

荒木沙羅は、小さくうなずいた。


< 4 / 92 >

この作品をシェア

pagetop