魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
くわえたばこで魔女は瓶のエチケットをチェックすると、グラスを手に取り、天井の照明にかざした。

「美しいルビーレッドだ。香りは・・」

ワインを揺らし、鼻を近づけて香りを楽しんでいる。

「カシス、ベリー系の熟した香り。少しスパイシーでスモーキーさもある・・樽の香りかな」

「さっさと話せ!」

イラつくグルシアを横目に、魔女は不服そうに首を傾げた。

「酒は楽しむものだ。まずは、我々、仮面夫婦に乾杯しよう」

そう言うと、もうひとつのグラスの縁に、軽く自分のグラスをあてた。

グラスのルビーレッドが揺れるのを見て、グルシアは、サリエルの言葉を思い出していた。

中級天使たちに、講義をしていた時のことだ。

「魔女を尋問する時は、姫君のごとく扱うのがコツだよ。
こちらの敵意むき出しは、相手の心を固く閉ざしてしまい、肝心な情報を取ることができなくなる」

「そうだな。君も今日は疲れているだろう。ゆっくりでいい。時間はある」

グルシアは、自分に言い聞かせるように言った。

余裕のなさで、イラついているのは自分のほうではないか。

魔女はワインをちびちびと飲んでいたが、アルコールで口が緩んだのか、突然、話を始めた。

「天界とニンゲン界、魔界はそれぞれ文化、価値観が違うだろう?」

グルシアはうなずいた。

そのうなずきに満足したのか、魔女は話を続けた。

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