魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
<魔女のお買い物>

グルシアがマンションの402号室の鍵を開けたると、・・・甘く香ばしい。

この匂いは?

魔女はリビングの扉を少し開けて、ぴょんと顔をのぞかした。

フードのついたクマの着ぐるみを着て、ツインテールの髪が揺れている。

「む・・・・・・」

しかめっつらをして、無言で立っているというか、フリーズしている。

グルシアは、鍵を下足箱の上に置き、魔女の表情をさぐるように見た。

「ただいま・・それで・・・何をしていたんだ?」

「あの・・・ホットケーキってやつを作った。動画で出ていたから」

それから、何か思い出すように目を天井に泳がせて、自信なさそうにぺこりと頭を下げた。

「おかえりなさいませ」

グルシアは、吹き出しそうになるのをこらえるため、口に手をあてた。

ぎこちない魔女のしぐさは、子どもっぽいし、愛らしい。

「それで、材料はどうした?」

魔女は、スマホの検索をしている指を止めた。

「近くのネットスーパーで、頼んだらすぐに持ってきてくれた」

「それで、他の買い物もしたのか?」

グルシアはネクタイをゆるめ、上着を脱いだ。

「うん、最速で頼んだら、さっき届いた。これも頼んだ」

魔女は自分の来ているクマの着ぐるみを指さし、次にリビングの片隅に置いてある小さめの段ボール数個を指さした。

「コーヒー、入れたけど、飲む?」

魔女はコーヒーメーカーから、コーヒーをマグカップに注いだ。

「キリマンジェロがいいかと思って、苦味とコクに星がいっぱいついているやつ。
あと、このカップも色違いのお揃いで買った。
夫婦って、こういうのを使うんだよね」

グルシアは目の前にある、ピンクとブルーのマグカップを見た。

「オットが仕事から帰ってきたら、ご飯?お風呂?それともアタシ?と聞くんだろう?
ドラマで見たし」

魔女は、得意げに鼻の下を指先でこすった。

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