魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
<魔界の地下指令室>
魔界は一見すると、オフィスビルの地下施設のようだ。
コンクリートは打ちっぱなし、いくつもの配管パイプが天井を走り、無機質で色がない。
床や壁はグレーの無彩色を基調に、砂漠を思わせるサンドベージュや乾いた苔色の迷彩色が所々混じる。
見習い魔女のグリンカは、足にまとわりつく黒ローブをさばくのに苦労しながら、鈍く光るステンレス扉を開けた。
そこはうす暗い指令指揮室。
壁際にモニター画面がいくつもならんでおり、映し出された広域地図に、いくつもの赤と緑の点がチラチラ動く。
「K103地点。そこはサキュバスとブッキングしそう。K107のほうに移動して。
そっちに居酒屋がある」
紫のフードを深くかぶった小柄な娘が中央の座席に座って、ヘッドセットをつけ指令を送っている。
グリンカは邪魔をしないように、そっと声をかけた。
「アレクサンドラ先生・・・ニンゲン界で大天使と接触したと聞いたのですが!」
あの女子高生、荒木沙羅が、能面の表情で振りむくと、するりと紫のフードがずれて、漆黒の髪が乱れ落ちた。