魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
<徴(しるし)か封印か、それが問題>

マンションの寝室。

グルシアは立ち上がり、窓のレースのカーテンの隙間から外を確認した。

大魔女が仲間を連れて、襲撃をしに来るかもしれないから、油断はできない。

ベッドに倒れてこんでいる魔女の脇に、グルシアは座った。

その手には、ペットボトルの水がある。

「少しは落ち着いたか?これを飲んだ方がいい」

魔女は腕で、目をゴシゴシこすった。

「今日のピアノ、楽しかったな。楽しいはずなのに・・胸が詰まる感じがしてさ」

魔女は何とか上半身を起こすと、ペットボトルを受け取りながら、スンスンと鼻を鳴らした。

「君は魔女の中でも、イレギュラーな存在なのだろう。
邪悪というより、邪悪さを演じなければならない。
そのような立場にいたのではないか?」

魔女は、ペットボトルの水をちびちびと飲んでいたが、はぁと息を吐いて

「アンタの言う立場って、よくわかんねーけどさ。魔界より、こっちのほうが楽しいと思ったのは確かだな。
甘いもんも色々あるし、酒も飲めるし、花もたくさん見ることができるしな」

グルシアはティッシュの箱を魔女に渡すと、隣りに座った。

「私は24時間、君の事を考えていた。
サリエルに言われたよ。恋する人を思うようだって」

グルシアは、膝の上で組んだ自分の手を見つめた。

黄金の剣を、いつ魔女の首にあてるのか・・・・

「うん、アタシだってそうだよ。
アンタを出し抜くために、どうすればいいのかって、いっつも考えていたし・・」

魔女はびぃーーーーっと鼻をかむと、グルシアのほうを向いた。

「でも、それも終わりだ。
アタシを封印すれば、アンタもこの仕事から解放されるだろ?」

グルシアに向けられた瞳は、美しいエメラルドグリーンで、雨にぬれているように艶やかだ。

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