素のまま恋
「と、次期女将ね」
「ああ……はい、娘の詩姫です。ご挨拶を」
玄関先でお母さんの隣に並び頭を下げる。
「皆森詩姫でございます。よろしくお願いいたしま……」
──え。
顔を上げれば、先程見たばかりの目つきの悪いお顔があって。
私よりも先に、驚いた表情をしていた。
そりゃそうだ、今さっき不良絡みの件で出会ったんだもの。
でも今は私も同じようなリアクションだと思う。
「まあ!綺麗な子ですわね。可愛らしさもあって、女将に似たのですわ」
「いいえ、そんな。この子、華道の成績がてんで駄目でして……鼓様のお教室にでも、なんて思っていましたの」
「あら、それなら是非いらしてくださいな。ねぇ、椿冴」
「ええ、是非」
ん?なんだこの爽やかを装う笑顔は──
つけてたピアスは?指輪は?どこに行ったの!?
髪もきちんと結んでるし和装だし。
さっき私が見た時とは全然違う姿。
まぁ?あっちも……さっきの女がなんで?って思ってるに違いないけど。
「改めまして、本日から孫の椿冴をよろしくお願いいたします。女将、詩姫さん」
「はい、こちらこそ。綺麗に彩って下さいね。華道界の貴公子である椿冴さんの花を魅せてください」
「はい。精一杯やらせていただきます」
──どうしよう、全く話を聞いてなかった。
というよりも入ってこない。
とりあえず笑顔を浮かべ乗り切り、鼓さんにお茶を出すからと、貴公子と言われた孫をロビーに置いて私も一緒に事務室に向かうことに。