素のまま恋
「夏休みらしいこと互いにあんま出来ない生活だろって話だよ。だから、その……お前が嫌じゃないなら、これ、使うかって……ことだ」
嫌じゃないなら──
そう言ってくるってことは、貴公子も嫌じゃないってこと?
「き、貴公子はいいのか……鼓さんの言う通り、私とチケット使って行くの」
「いいから聞いてんだよ。……嫌ならその場で返してる」
嫌じゃないって、いいからって……
なんで、貴公子の言葉で私、こんなドキドキしてるの……。
「……じゃあ、行きます」
✧
──なんて酷い顔。
水族館へ行く当日の朝、私は洗面台の鏡にうつる自分を見て自分の顔を睨んだ。
目の隈がひどいのなんの。
原因は分かってる。
昨夜、私は寝付けないことを想定して早めに布団へと入った。のはよかったけど、目が冴えるにさえていて……部屋がにわかに明るくなってきて、それから寝たからほんの数時間しか寝れてない。
だからこの目の隈、ということ。
「なんとかして隠さないと……」
柄にもなくソワソワして、鏡をチェックをして……髪を直す。
私服なんて片手で数えるくらいしか見せてないから、選ぶのにも時間を費やして貴公子が迎えに来る時間ギリギリになった。