素のまま恋











文化祭当日。

朝から生徒たちがごった返す中、私たちも最終チェックをしていた。

そして文化祭三十分前。
約束通り、貴公子が私たちの教室へとやって来た。


「これ、用意した造花……です」

「ん」


造花を手に貴公子は置かれた花瓶の方へと歩いていく。
じっと見てるのも、と思い教室の入口の方で待機。


「あれが華道界の貴公子、鼓椿冴くんかぁ。間近で見るとかっこいいね、ね、詩姫?」

「そ、そう?」

「ほら、見てよ。他のクラスの子も見に来てる」


杏奈が後ろから言うから、さりげなく廊下に目をやると数人の女子が確かに見に来ていた。


「美形っ」

「年下とは思えないんですけど!」


さすがだな貴公子。
わりとモテるじゃない。


……なに、モヤッとしてんの。私。


「あ……貴公子殿、終わったみたいだよ詩姫」


手にはわずかに余った造花。
花を全て確認している貴公子は私に花を渡して『終わりましたよ』と貴公子スマイルを向けて歩き出す。

待って、お礼言わないと。


私は角を曲がっていった貴公子を追いかけた。


「貴公子!」


振り返った貴公子に、私はスカートのポケットから一枚の券を取り出す。


「これ、うちの店の半額券。何回でも使えるの。……ひとり一枚、家族とか友達用に渡されてて」

「それを俺にくれんの?」

「……おう。お母さんは旅館があるから来ないし、貴公子には花綺麗に飾ってもらったから。……私がただ持っててももったいないしさ!」
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