素のまま恋
✧
文化祭当日。
朝から生徒たちがごった返す中、私たちも最終チェックをしていた。
そして文化祭三十分前。
約束通り、貴公子が私たちの教室へとやって来た。
「これ、用意した造花……です」
「ん」
造花を手に貴公子は置かれた花瓶の方へと歩いていく。
じっと見てるのも、と思い教室の入口の方で待機。
「あれが華道界の貴公子、鼓椿冴くんかぁ。間近で見るとかっこいいね、ね、詩姫?」
「そ、そう?」
「ほら、見てよ。他のクラスの子も見に来てる」
杏奈が後ろから言うから、さりげなく廊下に目をやると数人の女子が確かに見に来ていた。
「美形っ」
「年下とは思えないんですけど!」
さすがだな貴公子。
わりとモテるじゃない。
……なに、モヤッとしてんの。私。
「あ……貴公子殿、終わったみたいだよ詩姫」
手にはわずかに余った造花。
花を全て確認している貴公子は私に花を渡して『終わりましたよ』と貴公子スマイルを向けて歩き出す。
待って、お礼言わないと。
私は角を曲がっていった貴公子を追いかけた。
「貴公子!」
振り返った貴公子に、私はスカートのポケットから一枚の券を取り出す。
「これ、うちの店の半額券。何回でも使えるの。……ひとり一枚、家族とか友達用に渡されてて」
「それを俺にくれんの?」
「……おう。お母さんは旅館があるから来ないし、貴公子には花綺麗に飾ってもらったから。……私がただ持っててももったいないしさ!」