あなたの××××に触れたい
彼の好みのタイプは小柄な女性。
チビでよかったと思ったのは、人生で初めてだ。

「こうすれば、もう雷も怖くないですよね?」
「はい」

私を包み込む筋肉質な腕の中でコクリとうなずき、甘えるように彼の胸に頬を寄せる。
好きな人の温もりを感じて安心したのか、喜多川さんの言う通りあれほど怖いと思っていた雷が少しも気にならない。

「すみれって呼んでもいいですか?」
「は、はい」
「すみれさん、かわいい」

下の名前で呼ばれるのは、彼にとって自分は特別な存在なんだと感じられてうれしいけれど、褒められるのには慣れていない。

「恥ずかしから、かわいいって言うのはやめてください」
「やめないですよ。俺、好きになった相手には自分の思いを隠さずに伝えたいので」

レオくんをかわいがる様子を見ていれば、彼が溺愛主義者だとわかる。
この先、私たちの仲がどんな風に深まっていくのか楽しみだ。

「腕の中にすっぽりおさまるサイズ感も、この小さな手も、リスみたいな丸い瞳も、それから、そのふっくらとした艶やかな唇もすべてかわいい」

喜多川さんは熱を帯びたまなざしを私に向ける。
百五十三センチという低めの身長と、厚みのある唇が小さい頃からのコンプレックス。しかし彼がかわいいと言ってくれるのなら、もう劣等感を抱く必要はない。

「すみれさん。唇に触れてもいいですか?」
「えっ?」
「ずっと前から思ってました。かわいらしいあなたの唇に触れたいって……」

喜多川さんは大きな手で私の両腕を優しく掴み、ゆっくりと顔を近づけてくる。
触れたいって、そういう意味だったんだ……。
キスを求められるのはうれしい。でも後部座席には私たちだけでなくレオくんもいるのに、ふたりの世界に酔いしれるのには抵抗がある。

「ダメ……。レオくんに見られちゃう……」

首を左右に振ってキスを拒む。

「レオなら寝てるから大丈夫。ほら」

喜多川さんは優しい笑みを浮かべて静かに視線を落とす。
その先をたどってみると、彼の体に身を寄せて規則正しい寝息を立てているレオくんの姿があった。

「すみれさん、もう一度聞きます。キスしてもいいですか?」

彼は顔を上げて、熱のこもった目で私の唇を見つめる。
ああ、そうか。喜多川さんは唇フェチなんだ……。
私だけが彼の秘密を知っているという優越感に浸り、YESと返事をする代わりに静かに瞼を閉じた。       

              END
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