あなたの××××に触れたい
サロンに来店するだけで女性スタッフがざわつくほどカッコいい喜多川さんが、とくに取り柄のない私をデートに誘う理由がわからない。

「どうして私なんですか?」
「それは綿谷さんのことが好きだからに決まっているじゃないですか」
「っ⁉」

喜多川さんは照れくさそうな表情を浮かべ、口もとを手で覆う。

「レオのグルーミングのとき、どうして綿谷さんを指名すると思いますか?」

月一回のペースで来店して私を指名する理由について、今まで考えたことがなかった。
サロンにはトリマー歴の長いスタッフもいるし、大型犬のトリミングを得意とするスタッフもいる。
それなのに私を指名してくれる理由は、これしか思いつかない。

「レオくんが私に懐いているからですよね?」

レオくんはしつけが行き届いているため落ち着きがあるけれど、私の姿を見ると必ず尻尾を上げて左右に大きく振る。
これは犬がうれしいときにするサイン。
レオくんが私に懐いているという言葉は、決してうぬぼれではない。

「まあ、たしかにレオも綿谷さんのことが好きみたいだけど、それが理由じゃないです。大きなレオの面倒を一生懸命見てくれる、綿谷さんのひたむきな姿に俺は惹かれました。何時間見ていても飽きないですよ」

グルーミングの際、外出せずにレオくんの様子を食い入るように見つめる喜多川さんの姿が頭に浮かぶ。
何時間見ていても飽きないって……。喜多川さんはレオくんではなくて、私を見ていたってこと?
明らかになった事実に目を丸くする私とは対照的に、喜多川さんは口角を上げてニコリと微笑む。
喜多川さんが私を指名するようになってから、かれこれ二年が経つ。
そんな前から私に好意を寄せてくれていたなんて、少しも気づかなかった……。
鈍感な自分にあきれたものの、喜多川さんに対する思いが胸いっぱいに広がっていくのを実感する。

「私も喜多川さんのことが好きです」
「ありがとう。うれしいです」

ようやく自覚した思いを伝え、ふたりで顔を見合わせて笑みを交わす。

「綿谷さんを見ると、庇護欲を掻き立てられます」
「庇護欲?」
「そう。なにがあっても俺が守る、ってね」

喜多川さんははにかみながら、私の背中に腕を回して力を込める。
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