エリート同期は私の初恋でした

2.夏、距離

7月。

気づけば、佐竹が異動してきて3ヶ月経った。

今では、一ノ瀬と肩を並べる程のエリートっぷりで営業部に佐竹が居るのが当たり前になっている。

五月から始まったクールビズにもすっかり慣れ、営業部ではネクタイ姿の人の方が珍しくなっていた。

「今日も暑いなぁ。」

「外は三十五度らしいですよ。」

朝からそんな会話が飛び交う。

「今年は本当に暑いですね。」

部長がハンカチで額の汗を拭きながら苦笑する。

「外回り組は熱中症に気を付けろよ。」

「はーい。」

営業さんたちが返事をしながら、それぞれ営業先へ向かう準備を始める。

私はいつものようにパソコンを立ち上げ、その日のスケジュールを確認する。

メールチェックを終え、営業さんから依頼されていた資料を印刷していると――

「櫻井。」

聞き慣れた声に振り返る。

「おはよう。」

「おはよう。」

佐竹は片手にアイスコーヒーを持ちながら、自分の席へ向かった。

異動してきた頃のぎこちなさはもうない。

仕事の話だけじゃなく、ちょっとした雑談を交わすことも増えた。

「今日も外回り?」

「午前中だけ。午後は支店にいる予定。」

「そっか。」

「何かあったら電話して。」

「了解。」

短いやり取りを交わし、お互い仕事へ戻る。

たったそれだけの会話。

それなのに、いつの間にかそれが営業部の日常になっていた。

そんな穏やかな空気を破るように、高橋主任が営業部へ入ってくる。

「みんな、おはよう!」

「主任、おはようございます!」

「櫻井、悪いんだけど午後から佐竹と一緒に取引先へ行ってもらっていい?」

「えっ、私ですか?」

突然の一言に、思わず佐竹と顔を見合わせた。
< 13 / 14 >

この作品をシェア

pagetop