片想いが終わる頃、恋が始まる。
────そして。
彼女が俺たちの前から姿を消してから、五年という長い月日が流れた。
葵の口から、ついに「翡翠が見つかった」という報告を聞いたとき。
俺は、心の奥底でひとつの決意を固めた。
──自分の気持ちは、この胸の奥に永遠に封印しよう。
これからは、ただの幼馴染として、翡翠の恋を応援するんだ、と。
五年前、あんなにボロボロになって傷ついていた翡翠には。
せめて大好きな人との恋だけでも叶えて、世界で一番、幸せになってほしかったから。
───でも。
『ただいま』
前よりもずっと大人びて綺麗になったその姿を目の当たりにした瞬間。
抑えていた感情が溢れ出して。
────好き、と。
その場で全てを投げ出して、そう言ってしまいそうになった。
それでも、ギリギリ残った理性が喉の奥まで出かかったその言葉を無理やり押し込んで。
俺は、また。
何事もなかったかのように、ただの“仲の良い幼馴染”という役割を演じることになった。
──唯一変わったことと言えば、俺が本心を隠すための仮面をかぶり、彼女に甘い言葉を囁くようになったこと。
翡翠の"特別"になれないのなら。
少しでも、彼女の心に俺の存在を深く刻み込めるのなら。
たとえそれが、友人でも幼馴染でもいい。
人生の最期に、少しでも俺と過ごした時間を思い出してくれれば───……
────それが、葛藤の果てに俺が導き出した、狂おしいほどの結論だった。