ライバル同期の緒方は魅力的な手をもっている
 それから二週間後。いよいよ社内コンペの日がやってきた。

「じゃあ次、緒方・諸星ペア」

 課長の声が会議室に響く。麻由葉は緒方と顔を見合わせると小さくうなずいた。
 企画の説明は緒方が行う。麻由葉は資料を全員に配り終えると、スライドを操作するためにパソコンの前に腰かけた。

「では、始めます」

 緒方の真っすぐな声が響く。緒方は落ち着いた様子で企画の説明に入った。

「我々は〝手にはその人の人生が刻まれている〟をキーワードに、赤ちゃんから大人まで一生を通して寄り添えるハンドクリームというコンセプトの元、宣伝の企画を考えました」

 麻由葉は資料を持って説明する緒方の指先をじっと見つめる。初めて見た時に魅力的だと思った手は、緒方のことを知れば知るほどより輝いて見えた。その手はいつもよどみなく真っすぐで、逞しく、時にはセクシーで……触れたい手だと思った。

(それってもしかして、私緒方のこと……)

 麻由葉がそう思ったとき、緒方のプレゼンが終わる。緒方がグッと親指を立てたポーズを向けて、麻由葉もそれに応えた。
 すべてのペアのプレゼンが終了し、残りは結果発表を待つだけとなる。しばらくして審査を終えた課長が前に立った。

「どのペアもクライアントの要望を的確にとらえ、よく練られた企画だった。その中で特に優秀だったペアの企画を採用することとする」

 課長の目線が麻由葉たちの方に向く。

「緒方・諸星ペア、今回は君たちの案を採用したい」

 その声を聞いた途端、麻由葉はバッと緒方を振り返る。緒方も笑顔でうなずいている。自然と麻由葉は緒方と手を取り合った。その瞬間、握られた手にグッと力が込められ、触れた部分から緒方の熱が伝わってくる。
 その手は少ししっとりと潤っていて、大きくて逞しいとても優しい手だった。
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