ライバル同期の緒方は魅力的な手をもっている
 コンペが終わって一週間。ついに化粧品会社に企画をプレゼンする日がやってきた。
 麻由葉が外出の準備を整え、エレベーターホールで緒方を待っていると、向こうから課長が笑顔でやってくる。

「今日はプレゼンの日だったな。しっかりアピールして来いよ」

 課長の激励に麻由葉は「はい」と大きくうなずく。

「それにしても、緒方の言う通りふたりをペアにしてよかったよ」

 すると課長がハハハと笑い声を立てた。でもその声に、麻由葉は小さく眉を潜める。

「緒方が希望したって?」
「ん? 聞いてないのか? あいつがさ『どうしてもこの案件は落としたいから、諸星とペアに』って直々に希望してきたんだよ」

 初耳の話に麻由葉は瞳を揺らす。

「それにしても企画は普通〝取る〟ものだろ? 〝落とす〟って使い方はしないよなぁ。〝口説き落とす〟だったらわかるけどな」

 課長がそこまで言ったとき、コツンと踵の音が響く。見ると目の前には緒方が立っていた。

「じゃ頼んだぞ」

 課長はそそくさとフロアに戻っていく。
 麻由葉は次第に頬が熱くなるのを感じながら、こちらへとやってくる緒方を見つめた。

 緒方と一緒に誰もいないエレベーターに乗りこむ。麻由葉がそっと見上げると、普段はクールな緒方の頬が紅潮して見えた。

「私とのペア、課長に頼んだって本当?」

 麻由葉が小さく口を開くと、緒方が真っすぐにこちらへと顔を向けた。
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