ライバル同期の緒方は魅力的な手をもっている
(緒方って、いつも涼しい顔してるのに、次々と契約取ってくるんだよね)

 麻由葉はそっと緒方の顔を盗み見る。
 同期の緒方は入社早々、その容姿で社内中の女性社員の意中の人になったほどイケメンだ。身長は180cmを軽く越え、さらりとした艶のある黒髪は切れ長の印象的な目を際立たせている。クールで余計なことは話さないが、かといって近寄りがたいわけではなく、どの部署の社員とも円滑にコミュニケーションをとっている。
〝非の打ち所がないひと〟
 まさにその言葉を地で行っているような人が緒方なのだ。

 そんな緒方にいつか勝ちたいと麻由葉は今まで努力してきた。企画に特色を持たせ資料の見え方も工夫した。ここ数年は契約数も目標値を上回っている。でも未だに緒方には勝てないのだ。
 悔しさを次第に拗らせていった麻由葉は、いつしか緒方を極度にライバル視するようになった。

 そのことを、きっと課長は知っていたのだろう。今回のペア組発表の時、ニヤリと笑っていた。あれはきっとわざとペアにしたのだ。水と油を混ぜたら、とんでもない化学変化が起こるとでも期待したのだろうか。

(そんなわけないでしょうが!)

 麻由葉が小さく口を尖らせた時、向かいの席から緒方がぬっと顔を覗き込ませる。

「で、諸星はどんなアプローチがいいと思った?」

 緒方の低い声が飛び、麻由葉は慌てて課長のニヤリ顔を頭の片隅に追いやる。

「えっと……クライアントからの要望は、どんな世代にもマッチした広告……だよね。でもそれって、ある意味ターゲットが絞れないから結構難しいとは思う」
「まぁ、それは一理あるな」

 緒方はそう言いながら目の前に置いてある今回の対象商品に手を伸ばした。
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