ライバル同期の緒方は魅力的な手をもっている
ふたりとも口を閉ざし、しばらく静かな空気が流れる。
自動販売機の機械音がウィーンと大きくなっては、ヒューンと静かになるのを何度か繰り返した時、麻由葉はそっと顔を上げた。
ふと誰にも話したことのないことを、緒方に話してみたくなったのだ。
「私ね、自分の手にコンプレックスがあるの」
「コンプレックス?」
首を傾げる緒方に、麻由葉はこくんとうなずく。
「ほら、私の手って大きいでしょう? 特に手のひらの部分が大きいんだよね」
麻由葉はテーブルの上に自分の両手を広げる。緒方は不思議そうにその手を見つめていた。
「子供のころ、手の大きさ比べとかすると、いっつも私が一番大きいの。男の子にも『諸星の手はでかい』とか言われちゃって。恥ずかしかったなぁ。華奢な手をもつ、可愛い女の子に憧れたんだよね」
「そういうもんかな?」
「そういうもんなのよ、思春期って! だからかな? よくひとの手を見るようになったのは」
麻由葉は手をそっと持ち上げると、両手を蛍光灯にかざす。自分の手がシルエットのように目の前に浮かび上がった。
「この手ね、祖父譲りなの」
「おじいさん?」
「そう。すごく手が大きな人だったんだって」
「へぇ」
「昔、祖母が言ってたの。ふたりはお見合い結婚なんだけどね。お見合いの間、緊張で一度も顔を上げられなくて、だからずっと祖父の大きな手を見てたんだって」
麻由葉はくすりと肩を揺らす。祖母はよくその話をしてくれた。その度に、麻由葉の手が大きいのは祖父譲りなのだと思ったものだ。
「でもそれってさ……」
しばらくして緒方が口を開く。
「ある意味、究極の愛なんじゃないかな?」
「え? 究極の愛?」
普段の緒方からは想像もつかないような言葉が飛び出し、麻由葉は戸惑ったように顔を上げる。
自動販売機の機械音がウィーンと大きくなっては、ヒューンと静かになるのを何度か繰り返した時、麻由葉はそっと顔を上げた。
ふと誰にも話したことのないことを、緒方に話してみたくなったのだ。
「私ね、自分の手にコンプレックスがあるの」
「コンプレックス?」
首を傾げる緒方に、麻由葉はこくんとうなずく。
「ほら、私の手って大きいでしょう? 特に手のひらの部分が大きいんだよね」
麻由葉はテーブルの上に自分の両手を広げる。緒方は不思議そうにその手を見つめていた。
「子供のころ、手の大きさ比べとかすると、いっつも私が一番大きいの。男の子にも『諸星の手はでかい』とか言われちゃって。恥ずかしかったなぁ。華奢な手をもつ、可愛い女の子に憧れたんだよね」
「そういうもんかな?」
「そういうもんなのよ、思春期って! だからかな? よくひとの手を見るようになったのは」
麻由葉は手をそっと持ち上げると、両手を蛍光灯にかざす。自分の手がシルエットのように目の前に浮かび上がった。
「この手ね、祖父譲りなの」
「おじいさん?」
「そう。すごく手が大きな人だったんだって」
「へぇ」
「昔、祖母が言ってたの。ふたりはお見合い結婚なんだけどね。お見合いの間、緊張で一度も顔を上げられなくて、だからずっと祖父の大きな手を見てたんだって」
麻由葉はくすりと肩を揺らす。祖母はよくその話をしてくれた。その度に、麻由葉の手が大きいのは祖父譲りなのだと思ったものだ。
「でもそれってさ……」
しばらくして緒方が口を開く。
「ある意味、究極の愛なんじゃないかな?」
「え? 究極の愛?」
普段の緒方からは想像もつかないような言葉が飛び出し、麻由葉は戸惑ったように顔を上げる。