ライバル同期の緒方は魅力的な手をもっている
 カチカチとマウスをクリックする音と、キーボードを叩く音が響く。
 あれからふたりは会議室に戻り、企画内容を詰めた。麻由葉がぼんやりと頭に描いた案を、緒方が的確に企画書に落とし込んでいく。
 抜群のコンビネーションを発揮しながら、企画の草案ができたころには、時計の針は二十一時を過ぎたあたりだった。

 麻由葉はキーボードから手を離すと、ぐっと両手を上げて伸びをする。さすがに集中力も切れかけていた。

「今日はここまでにして、続きは明日にするか」

 緒方も疲れたのか、大きく肩をぐるぐると回している。

「そうだね。でもかなり形になったから、いいペースだと思うよ」

 麻由葉がそう言いながら、ノートパソコンをパタンと閉じた時、同時にグーッとおなかが音を鳴らした。

「きゃ」

 慌てて両手でおなかを押さえるが、時すでに遅し。緒方の耳にはばっちりと音が届いていたようだ。

「何か食べて帰るか?」

 くすりと笑って緒方が振り返る。でもそのまま「あ……」と一瞬動きを止めた。

「……まぁ、誰かが部屋で待ってるなら別だけど」

 珍しく遠慮がちに出す緒方の声に、麻由葉は小さく目を開く。些細なことにも気を配る緒方のことだ。麻由葉のプライベートを気にしてくれたのかも知れない。
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