山賊退治専門屋
最初は、
どうにかしてこのアジトから逃げ出そうと考えていた。
けれど、僕には戦う力なんてない。
ヤンスの圧倒的な腕力には到底かなわないのだと思い知らされていたのだ。
抵抗したところで、
強引に抱きしめられたり、
不意打ちでキスをされたり、
軽々とお姫様抱っこをされたりするばかり。
……もう、このままでもいいのかもしれない。
いつしか、
そんな諦めにも似た気持ちが芽生え始めていた。
僕は外に出ることを許されず、
毎日アジトでヤンスの帰りを待つ日々を送っていた。
食事を作り、
一緒に過ごし、
同じ寝床で眠る。
あんなに落ち着かないと思っていたはずなのに、
それがいつの間にか
「当たり前」
の日常になってしまっていた。
しかし――そのささやかで穏やかな日々は、突然終わりを迎える。
ある日のこと、
一人の少女が山賊のアジトへ乗り込んできたのだ。
身の丈ほどもある槍を手にしたその少女は、
襲いかかる山賊たちを次々と薙ぎ払っていく。
異変に気づいたヤンスは、
急いで僕を背中に庇い立った。
「ランポだけは……絶対に守る!」
だが、少女の動きは目にも留まらぬ速さだった。
一瞬の隙を突かれ、
ヤンスは豪快に蹴り飛ばされてしまう。
「君は……一体……?」
呆然とする僕に、
少女は槍を引いて短く答えた。
「ラゴ。
水を操る力を持つ、
山賊退治の専門家」
そう名乗ると、
ラゴは瞬く間にヤンスを追い詰め、
身動きを封じてしまった。
「君、誘拐された子でしょ? 安心しなよ、一緒に行こう」
急展開に戸惑う僕を置き去りに、
ラゴはぐいっと僕の手を引いてアジトを後にした。
初めてアジトの外へ出た僕は、
そこが険しい山の頂上付近だと知る。
眼下に広がる断崖絶壁を前にして、
僕はすっかり足がすくんでしまった。
「……怖い?」
「も、もちろんだよ……こんな高いところ……」
「じゃあ、抱っこして降りようか」
ラゴはそう言うなり、
僕をひょいとお姫様抱っこした。
そして躊躇することなく、
そのまま崖に向かって飛び降りたのだ!
「えぇぇぇっ!?」
急降下する感覚に、
僕は悲鳴を上げながら必死でラゴにしがみつく。
風を切り裂き、
地面が刻一刻と迫る――そう思った次の瞬間。
ドシン、と軽い衝撃。
驚いたことに、
ラゴは水流をクッションにして見事に着地してみせた。
二人とも擦り傷ひとつない。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「す、すごい……あ、ありがとう……」
心臓をバクバクさせながら、
僕はなんとかお礼を口にした。
それから村へ向かう道中、
僕はこれまでの経緯をラゴに打ち明けた。
気づけばヤンスのアジトに囚われていたこと。
ヤンスは前世の記憶があると言っていたこと。
そして、自分は本当に異世界から来たのかもしれないということ――。
「ふーん。ヤンスの言うことは信用できないけど、
君が異世界人だって話は本当っぽいね」
ラゴはうなずきながら話を聞いてくれた。
やがて目の前に大きな街が見え始め、
僕たちはギルドへと到着する。
こうして僕は、
山賊のアジトでの奇妙な生活に別れを告げ、
新たな仲間たちとともにギルドで暮らしていくことになったのだった。
どうにかしてこのアジトから逃げ出そうと考えていた。
けれど、僕には戦う力なんてない。
ヤンスの圧倒的な腕力には到底かなわないのだと思い知らされていたのだ。
抵抗したところで、
強引に抱きしめられたり、
不意打ちでキスをされたり、
軽々とお姫様抱っこをされたりするばかり。
……もう、このままでもいいのかもしれない。
いつしか、
そんな諦めにも似た気持ちが芽生え始めていた。
僕は外に出ることを許されず、
毎日アジトでヤンスの帰りを待つ日々を送っていた。
食事を作り、
一緒に過ごし、
同じ寝床で眠る。
あんなに落ち着かないと思っていたはずなのに、
それがいつの間にか
「当たり前」
の日常になってしまっていた。
しかし――そのささやかで穏やかな日々は、突然終わりを迎える。
ある日のこと、
一人の少女が山賊のアジトへ乗り込んできたのだ。
身の丈ほどもある槍を手にしたその少女は、
襲いかかる山賊たちを次々と薙ぎ払っていく。
異変に気づいたヤンスは、
急いで僕を背中に庇い立った。
「ランポだけは……絶対に守る!」
だが、少女の動きは目にも留まらぬ速さだった。
一瞬の隙を突かれ、
ヤンスは豪快に蹴り飛ばされてしまう。
「君は……一体……?」
呆然とする僕に、
少女は槍を引いて短く答えた。
「ラゴ。
水を操る力を持つ、
山賊退治の専門家」
そう名乗ると、
ラゴは瞬く間にヤンスを追い詰め、
身動きを封じてしまった。
「君、誘拐された子でしょ? 安心しなよ、一緒に行こう」
急展開に戸惑う僕を置き去りに、
ラゴはぐいっと僕の手を引いてアジトを後にした。
初めてアジトの外へ出た僕は、
そこが険しい山の頂上付近だと知る。
眼下に広がる断崖絶壁を前にして、
僕はすっかり足がすくんでしまった。
「……怖い?」
「も、もちろんだよ……こんな高いところ……」
「じゃあ、抱っこして降りようか」
ラゴはそう言うなり、
僕をひょいとお姫様抱っこした。
そして躊躇することなく、
そのまま崖に向かって飛び降りたのだ!
「えぇぇぇっ!?」
急降下する感覚に、
僕は悲鳴を上げながら必死でラゴにしがみつく。
風を切り裂き、
地面が刻一刻と迫る――そう思った次の瞬間。
ドシン、と軽い衝撃。
驚いたことに、
ラゴは水流をクッションにして見事に着地してみせた。
二人とも擦り傷ひとつない。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「す、すごい……あ、ありがとう……」
心臓をバクバクさせながら、
僕はなんとかお礼を口にした。
それから村へ向かう道中、
僕はこれまでの経緯をラゴに打ち明けた。
気づけばヤンスのアジトに囚われていたこと。
ヤンスは前世の記憶があると言っていたこと。
そして、自分は本当に異世界から来たのかもしれないということ――。
「ふーん。ヤンスの言うことは信用できないけど、
君が異世界人だって話は本当っぽいね」
ラゴはうなずきながら話を聞いてくれた。
やがて目の前に大きな街が見え始め、
僕たちはギルドへと到着する。
こうして僕は、
山賊のアジトでの奇妙な生活に別れを告げ、
新たな仲間たちとともにギルドで暮らしていくことになったのだった。