元不良お嬢様〜小さな苺姫の物語〜
羊飼さんは深いため息をつきながら、
目の前に立つ私へ静かに説明を始めた。
「石ノ木さんは、全世界でも別格の存在です」
なぜか、
羊飼さんは、真剣な口調で話し始めた。
「まず、素手だけで世界を一つ壊せるほどの力を持っています。
そして、過去の出来事を書き換える『歴史改変』、
さらに世界のルールや常識そのものを書き換える『法則改変』の異能まで使えます」
異能なんて、本当にあったんだ。
私の感想は、
真っ先にそれだった。
「校長先生でさえ
『全世界最強』
と認めています。
彼に勝てる人はいないと言われています」
「これだけの異能があったら、
そうだろうね」
「そういうことだ」
あまりにもあっさりした態度だった。
「私は強い人と戦いたいんだけど、
どうしても駄目っていうなら、
石ノ木君の代わりに喧嘩できる人を紹介してよ」
「やめた方がいいです!
そもそも、
医師令嬢がすることじゃないですし、
不良から足洗うんじゃないですか?」
「それは、
幼なじみとか、
私の両親の意見だから。
私は、喧嘩できる相手がいるなら、
いつだってしたい
小さな苺姫の名がすたる」
「それを駄目って言われているんでしょう?」
「小さな苺姫?」
石ノ木君は、なぜか眉をひそめていた。
廊下の向こうから軽い足音が近づいてくる。
「面白そうな話をしてるじゃない」
短い髪を揺らしながら現れたのは、
一人の少女だった。
問題行動が多いことで有名な少女――カンツウォーネだった。
「もしかして、
君が小さな苺姫かしら?
噂で聞いてるわ」
羊飼さんは頭を抱えた。
「最悪です……。
もう、噂になっていたんですか?」
「向こうから、
現れてくれるとか、
捜す手間が省けた」
私は、関心していた。
「捜していたんですか?」
「捜せないよ。
どこにいるか、
そもそも知らないし」
「そう」
次の瞬間、
轟音と共に炎が噴き上がった。
廊下いっぱいを埋め尽くす巨大な火柱。
熱風だけで壁紙が焦げ、
窓ガラスが一斉に砕け散る。
「死んでも恨まないでね!」
巨大な炎が私へ迫る。
普通なら回避するしかない攻撃。
しかし私は前へ歩いた。
そして燃え盛る炎へ向かって左手を伸ばす。
「魔力無効!!」
パンッ。
軽く手で払っただけだった。
それだけで炎は霧のように消滅する。
カンツウォーネが目を見開く。
「何がどうなっているのかしら?
魔法を……素手で?」
「いやあ、
今まで素手とか武器で、
歯向かうやつはいたけど、
こんな異質な方法は初めてだよ。
私には、痛くも痒くもないけど」
「本当に人間なの、君!」
怒りと驚きが混ざった叫びだった。
彼女はさらに魔力を高める。
巨大な火球が十数個出現する。
一斉に発射。
私は走った。
「魔力全無効!!」
火球を拳で殴る。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
すべて爆発する前に打ち消される。
「そんな馬鹿な!」
カンツウォーネは飛び上がり、
炎をまとった回し蹴りを放つ。
私は腕で受け止めた。
ドゴォォン!!
衝撃だけで校舎の壁が吹き飛ぶ。
天井が崩れ、床が砕ける。
校舎全体が激しく揺れた。
羊飼さんは青ざめながら叫ぶ。
「やめてください!! 本当に学校が壊れます!!」
しかし二人とも止まらない。
私は拳を放つ。
カンツウォーネは炎で受ける。
衝突した瞬間、
爆発。
校舎の一角が吹き飛び、
巨大な穴が開いた。
「ああああああ!!」
羊飼さんは泣きそうな顔になる。
「先生に怒られます!!」
さらにカンツウォーネは巨大な火竜を作り出した。
炎でできた竜が咆哮しながら突撃する。
私はその鼻先へ飛び込み、拳を一発。
火竜は粉々になって消えた。
「まだよ!」
カンツウォーネは連続攻撃を仕掛ける。
爆炎、
すべて私は素手で弾き飛ばしていく。
「あり得ないわよ……」
カンツウォーネの額に汗が流れる。
そのときだった。
石ノ木君が静かに口を開く。
「楽しんでるところ悪いけど、
そろそろ終わらせるか。
オレ、
明日、
学校で友達と約束してるから」
次の瞬間、
カンツウォーネが発していた、
炎が小さくなる。
「力が……出ない……!」
石ノ木君は淡々と言う。
「法則改変。
『君は今、世界で最弱な魔法を使う存在』
に変えた」
「まだ終わってないわ!」
彼女は全力で飛び込み、
渾身の蹴りを私の脇腹へ叩き込む。
ドンッ!
鈍い音が響き、
私は数メートル吹き飛ばされた。
骨が折れた感覚があり、
皮膚が裂ける。
羊飼さんは悲鳴を上げた。
「大丈夫ですか!」
私は立ち上がる。
「これぐらいなら、
たいしたことないね」
傷口を見る。
折れた骨が元へ戻る。
裂けた皮膚が閉じていく。
一分もかからない。
十五秒ほどで完全に治ってしまった。
カンツウォーネは呆然とした。
「……再生した?」
私は身体を軽く動かす。
「これで治った」
「本当に人間なの?……」
彼女は同じ言葉をもう一度つぶやいた。
「私に勝ちたいなら、
十五秒以内で、
圧倒することだね。
十五秒こえたら、
怪我も病気も治るから。
これで、
皆勤賞、狙えるかも」
やがてカンツウォーネが、
膝をつく。
「負けた」
静かな敗北宣言だった。
「これで、終わり?
私、もっと戦いたいんだけど。
君は、それなりに手応えあったと思うけど」
「あたしは、
もう勝てないわ。
だから、
何でも言うことを聞く」
「私は喧嘩で勝ったっていう実績が欲しかっただけ」
戦う理由は、それだけだった。
すると石ノ木君も静かに続ける。
「俺は強さの功績が欲しかった。
それだけ」
その言葉を聞き、
カンツウォーネは苦笑する。
「読めないわね……」
「歴史改変」
世界が白く染まる。
壊れた校舎、
割れた窓、
崩れた壁、
砕けた床、
そのすべてが時間を巻き戻すように修復されていく。
数秒後には、
戦闘が始まる前とまったく同じ校舎がそこにあった。
戦いの痕跡は一つも残っていない。
羊飼さんはその光景を見て、
力が抜けたように床へ座り込む。
「もう……本当に勘弁してください……」
カンツウォーネは苦笑しながら立ち上がった。
こうして、学校を巻き込んだ大乱闘は、
誰一人欠けることなく幕を閉じた。
「もっと、
強いやついないの?」
「お嬢様ぐらい、
人間離れしていると、
現れないでしょう。
不良はやめて、
女子中学生らしい生活を目指したら、
どうですか?」
「やっぱり、
こうなるのか」
目の前に立つ私へ静かに説明を始めた。
「石ノ木さんは、全世界でも別格の存在です」
なぜか、
羊飼さんは、真剣な口調で話し始めた。
「まず、素手だけで世界を一つ壊せるほどの力を持っています。
そして、過去の出来事を書き換える『歴史改変』、
さらに世界のルールや常識そのものを書き換える『法則改変』の異能まで使えます」
異能なんて、本当にあったんだ。
私の感想は、
真っ先にそれだった。
「校長先生でさえ
『全世界最強』
と認めています。
彼に勝てる人はいないと言われています」
「これだけの異能があったら、
そうだろうね」
「そういうことだ」
あまりにもあっさりした態度だった。
「私は強い人と戦いたいんだけど、
どうしても駄目っていうなら、
石ノ木君の代わりに喧嘩できる人を紹介してよ」
「やめた方がいいです!
そもそも、
医師令嬢がすることじゃないですし、
不良から足洗うんじゃないですか?」
「それは、
幼なじみとか、
私の両親の意見だから。
私は、喧嘩できる相手がいるなら、
いつだってしたい
小さな苺姫の名がすたる」
「それを駄目って言われているんでしょう?」
「小さな苺姫?」
石ノ木君は、なぜか眉をひそめていた。
廊下の向こうから軽い足音が近づいてくる。
「面白そうな話をしてるじゃない」
短い髪を揺らしながら現れたのは、
一人の少女だった。
問題行動が多いことで有名な少女――カンツウォーネだった。
「もしかして、
君が小さな苺姫かしら?
噂で聞いてるわ」
羊飼さんは頭を抱えた。
「最悪です……。
もう、噂になっていたんですか?」
「向こうから、
現れてくれるとか、
捜す手間が省けた」
私は、関心していた。
「捜していたんですか?」
「捜せないよ。
どこにいるか、
そもそも知らないし」
「そう」
次の瞬間、
轟音と共に炎が噴き上がった。
廊下いっぱいを埋め尽くす巨大な火柱。
熱風だけで壁紙が焦げ、
窓ガラスが一斉に砕け散る。
「死んでも恨まないでね!」
巨大な炎が私へ迫る。
普通なら回避するしかない攻撃。
しかし私は前へ歩いた。
そして燃え盛る炎へ向かって左手を伸ばす。
「魔力無効!!」
パンッ。
軽く手で払っただけだった。
それだけで炎は霧のように消滅する。
カンツウォーネが目を見開く。
「何がどうなっているのかしら?
魔法を……素手で?」
「いやあ、
今まで素手とか武器で、
歯向かうやつはいたけど、
こんな異質な方法は初めてだよ。
私には、痛くも痒くもないけど」
「本当に人間なの、君!」
怒りと驚きが混ざった叫びだった。
彼女はさらに魔力を高める。
巨大な火球が十数個出現する。
一斉に発射。
私は走った。
「魔力全無効!!」
火球を拳で殴る。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
すべて爆発する前に打ち消される。
「そんな馬鹿な!」
カンツウォーネは飛び上がり、
炎をまとった回し蹴りを放つ。
私は腕で受け止めた。
ドゴォォン!!
衝撃だけで校舎の壁が吹き飛ぶ。
天井が崩れ、床が砕ける。
校舎全体が激しく揺れた。
羊飼さんは青ざめながら叫ぶ。
「やめてください!! 本当に学校が壊れます!!」
しかし二人とも止まらない。
私は拳を放つ。
カンツウォーネは炎で受ける。
衝突した瞬間、
爆発。
校舎の一角が吹き飛び、
巨大な穴が開いた。
「ああああああ!!」
羊飼さんは泣きそうな顔になる。
「先生に怒られます!!」
さらにカンツウォーネは巨大な火竜を作り出した。
炎でできた竜が咆哮しながら突撃する。
私はその鼻先へ飛び込み、拳を一発。
火竜は粉々になって消えた。
「まだよ!」
カンツウォーネは連続攻撃を仕掛ける。
爆炎、
すべて私は素手で弾き飛ばしていく。
「あり得ないわよ……」
カンツウォーネの額に汗が流れる。
そのときだった。
石ノ木君が静かに口を開く。
「楽しんでるところ悪いけど、
そろそろ終わらせるか。
オレ、
明日、
学校で友達と約束してるから」
次の瞬間、
カンツウォーネが発していた、
炎が小さくなる。
「力が……出ない……!」
石ノ木君は淡々と言う。
「法則改変。
『君は今、世界で最弱な魔法を使う存在』
に変えた」
「まだ終わってないわ!」
彼女は全力で飛び込み、
渾身の蹴りを私の脇腹へ叩き込む。
ドンッ!
鈍い音が響き、
私は数メートル吹き飛ばされた。
骨が折れた感覚があり、
皮膚が裂ける。
羊飼さんは悲鳴を上げた。
「大丈夫ですか!」
私は立ち上がる。
「これぐらいなら、
たいしたことないね」
傷口を見る。
折れた骨が元へ戻る。
裂けた皮膚が閉じていく。
一分もかからない。
十五秒ほどで完全に治ってしまった。
カンツウォーネは呆然とした。
「……再生した?」
私は身体を軽く動かす。
「これで治った」
「本当に人間なの?……」
彼女は同じ言葉をもう一度つぶやいた。
「私に勝ちたいなら、
十五秒以内で、
圧倒することだね。
十五秒こえたら、
怪我も病気も治るから。
これで、
皆勤賞、狙えるかも」
やがてカンツウォーネが、
膝をつく。
「負けた」
静かな敗北宣言だった。
「これで、終わり?
私、もっと戦いたいんだけど。
君は、それなりに手応えあったと思うけど」
「あたしは、
もう勝てないわ。
だから、
何でも言うことを聞く」
「私は喧嘩で勝ったっていう実績が欲しかっただけ」
戦う理由は、それだけだった。
すると石ノ木君も静かに続ける。
「俺は強さの功績が欲しかった。
それだけ」
その言葉を聞き、
カンツウォーネは苦笑する。
「読めないわね……」
「歴史改変」
世界が白く染まる。
壊れた校舎、
割れた窓、
崩れた壁、
砕けた床、
そのすべてが時間を巻き戻すように修復されていく。
数秒後には、
戦闘が始まる前とまったく同じ校舎がそこにあった。
戦いの痕跡は一つも残っていない。
羊飼さんはその光景を見て、
力が抜けたように床へ座り込む。
「もう……本当に勘弁してください……」
カンツウォーネは苦笑しながら立ち上がった。
こうして、学校を巻き込んだ大乱闘は、
誰一人欠けることなく幕を閉じた。
「もっと、
強いやついないの?」
「お嬢様ぐらい、
人間離れしていると、
現れないでしょう。
不良はやめて、
女子中学生らしい生活を目指したら、
どうですか?」
「やっぱり、
こうなるのか」