元不良お嬢様〜小さな苺姫の物語〜
第2話
私は朝起きて髪をいつも通りのハーフシニヨンアップにし、
苺柄のシュシュで留める。
ニュースでは
「人を襲うイノシシやサルの目撃情報」
が流れていた。
面白そうなので、
こんなやつに出くわしたら喧嘩を申し込もうと考えていた。
サイのぬいぐるみの姿をした妖精のチェローテを、
強引にスクールバッグへ押し込む。
「人が気持ちよく寝ている最中に、
何をする?」
「寝てても喧嘩相手はいつうろついているかわからないから、
来るんだ」
「姉貴、
それは質問の答えになってないって」
制服に着替えたら、
私より小柄なチビママと、
モルモットのように太っているモルモットパパに挨拶する。
モルモットパパとチビママは、
新婚夫婦や恋人のようにリビングでイチャイチャしていた。
「行ってきます、
モルモットパパ、
チビママ」
「その呼び方、
やめなさいっていつも言ってるでしょ」
多摩湖ちゃんは朝練のために、
もういない。
牛縞君に声をかけようとしたら、
1年8組の苺市江ちゃんがいた。
身長151.8センチの自称152センチのチビだ。
確か誕生日も1月8日で私と近かった気がする。
……そんなことはどうでもいい。
「なぜ、牛縞君の隣を歩いているの?」
私は問いかけた。
まるで恋人のように牛縞君と腕を組んでいる市江ちゃんが許せなかった。
許せない?
付き合ってもないし、
ただの幼馴染のはずなのに、
どうして?
自分でもよくわからない怒りを抱えた。
「あたしは、彼の双子の妹なの」
妹?
聞いたことがない。
牛嶋君はおうし座で、
市江ちゃんとは誕生日が離れすぎているのに、
双子も何もないだろう。
第一、牛嶋と苺で苗字が違うじゃないか。
「冗談じゃないんだ。
実は幼稚園の頃に両親が離婚して、
小学校では別々だったけど、
中学で一緒になれたんだ」
牛嶋君もそう言うけれど、そんなこと聞いたことがない。
「君は誰なの?」
「……牛嶋君の、幼馴染で」
私はか細く答えた。
市江ちゃんの鋭い目つきに一瞬、ひるんでしまった。
相手はチビな女子だ。
私が殴れば一瞬で解決するけれど、
そんなことをしたら先生から退学や休学を言い渡されるかもしれない。
怪我でもさせたら警察沙汰だし、医師である親も世間から責められる。
「幼馴染なんて、聞いたことない」
その時だった。
ニュースで見たサルとイノシシが猛スピードで走ってきたのだ。
サルが市江ちゃんに直撃し、
イノシシは縞君に突進した。
「痛い、痛い!」
市江ちゃんが叫んだ。
私は即座にサルとイノシシを蹴り、
殴りつけた。
野獣たちはピクリとも動かなくなった。
脈を確認すると息はしている。
大丈夫だろう。
すぐに救急車を呼んだ。
学校には遅刻してしまったが、
事情を話すと先生には責められなかった。
「苺野さんは、大丈夫だったのか?」
「はい、私は大丈夫です」
多摩湖ちゃんからも声をかけられた。
「毎ちゃん、大丈夫だったの?
ごめんね、その時に近くにいなくて」
「ううん、多摩湖ちゃんがいてもどうにもできなかったと思うし、
逆にその場にいたら危なかったよ」
今日の朝のホームルームで、
市江ちゃんと牛縞君が入院していると報告があった。
『この学校の生徒である牛嶋君と苺さんが、
サルとイノシシに襲われました』
多摩湖ちゃんは放課後も休みの日も(日曜日以外は)部活があるというので、
私は一人で牛縞君のお見舞いに行くことにした。
受付にいる看護師さんからイノシシにお腹を直撃されたそうだが、
大した怪我ではないという話だった。
「牛縞君」
「来たか、脳内お花畑」
「脳内『苺畑』だし! どうしてこんな時に悠長なこと言ってられるの?
ごめんね……サルとイノシシは保護されたらしいけど、私がいながら何もできなくて……」
「……俺にとっては、君が傷つく方がつらいよ」
「なんて?」
「何でもない!」
牛縞君の顔は、
苺のように真っ赤になっていた。
「ねえ……市江ちゃんとは――」
苺柄のシュシュで留める。
ニュースでは
「人を襲うイノシシやサルの目撃情報」
が流れていた。
面白そうなので、
こんなやつに出くわしたら喧嘩を申し込もうと考えていた。
サイのぬいぐるみの姿をした妖精のチェローテを、
強引にスクールバッグへ押し込む。
「人が気持ちよく寝ている最中に、
何をする?」
「寝てても喧嘩相手はいつうろついているかわからないから、
来るんだ」
「姉貴、
それは質問の答えになってないって」
制服に着替えたら、
私より小柄なチビママと、
モルモットのように太っているモルモットパパに挨拶する。
モルモットパパとチビママは、
新婚夫婦や恋人のようにリビングでイチャイチャしていた。
「行ってきます、
モルモットパパ、
チビママ」
「その呼び方、
やめなさいっていつも言ってるでしょ」
多摩湖ちゃんは朝練のために、
もういない。
牛縞君に声をかけようとしたら、
1年8組の苺市江ちゃんがいた。
身長151.8センチの自称152センチのチビだ。
確か誕生日も1月8日で私と近かった気がする。
……そんなことはどうでもいい。
「なぜ、牛縞君の隣を歩いているの?」
私は問いかけた。
まるで恋人のように牛縞君と腕を組んでいる市江ちゃんが許せなかった。
許せない?
付き合ってもないし、
ただの幼馴染のはずなのに、
どうして?
自分でもよくわからない怒りを抱えた。
「あたしは、彼の双子の妹なの」
妹?
聞いたことがない。
牛嶋君はおうし座で、
市江ちゃんとは誕生日が離れすぎているのに、
双子も何もないだろう。
第一、牛嶋と苺で苗字が違うじゃないか。
「冗談じゃないんだ。
実は幼稚園の頃に両親が離婚して、
小学校では別々だったけど、
中学で一緒になれたんだ」
牛嶋君もそう言うけれど、そんなこと聞いたことがない。
「君は誰なの?」
「……牛嶋君の、幼馴染で」
私はか細く答えた。
市江ちゃんの鋭い目つきに一瞬、ひるんでしまった。
相手はチビな女子だ。
私が殴れば一瞬で解決するけれど、
そんなことをしたら先生から退学や休学を言い渡されるかもしれない。
怪我でもさせたら警察沙汰だし、医師である親も世間から責められる。
「幼馴染なんて、聞いたことない」
その時だった。
ニュースで見たサルとイノシシが猛スピードで走ってきたのだ。
サルが市江ちゃんに直撃し、
イノシシは縞君に突進した。
「痛い、痛い!」
市江ちゃんが叫んだ。
私は即座にサルとイノシシを蹴り、
殴りつけた。
野獣たちはピクリとも動かなくなった。
脈を確認すると息はしている。
大丈夫だろう。
すぐに救急車を呼んだ。
学校には遅刻してしまったが、
事情を話すと先生には責められなかった。
「苺野さんは、大丈夫だったのか?」
「はい、私は大丈夫です」
多摩湖ちゃんからも声をかけられた。
「毎ちゃん、大丈夫だったの?
ごめんね、その時に近くにいなくて」
「ううん、多摩湖ちゃんがいてもどうにもできなかったと思うし、
逆にその場にいたら危なかったよ」
今日の朝のホームルームで、
市江ちゃんと牛縞君が入院していると報告があった。
『この学校の生徒である牛嶋君と苺さんが、
サルとイノシシに襲われました』
多摩湖ちゃんは放課後も休みの日も(日曜日以外は)部活があるというので、
私は一人で牛縞君のお見舞いに行くことにした。
受付にいる看護師さんからイノシシにお腹を直撃されたそうだが、
大した怪我ではないという話だった。
「牛縞君」
「来たか、脳内お花畑」
「脳内『苺畑』だし! どうしてこんな時に悠長なこと言ってられるの?
ごめんね……サルとイノシシは保護されたらしいけど、私がいながら何もできなくて……」
「……俺にとっては、君が傷つく方がつらいよ」
「なんて?」
「何でもない!」
牛縞君の顔は、
苺のように真っ赤になっていた。
「ねえ……市江ちゃんとは――」