転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
「不思議な人……」
「おーい、ユフィ! 暇があったら、俺たちとメシでもどうだ?」
背後から、太陽のような明るさでブロンさんが現れた。
「あ、いいですね! お腹すきました」
「おう、そうだな。新人の歓迎会、まだやってなかったしな!」
ガルドさんが音頭をとり、ギルドの酒場スペースに、笑い声とエールの香りが満ちる。
賑やかな仲間たち。
居酒屋のような、雑多で、飾りのない笑い声。
もしかして、私がずっと求めていた居場所ってこんな感じなのかも。
まあ、前世日本人に貴族社会に馴染めっていうのも、難しい話だよね。
「ユフィは本当に、あっという間に馴染んじまったなあ」
ガルドさんが豪快に笑う。
「はい。私……ここに来て、本当によかったです!」
ふと、窓の外に視線を向けると、夕闇の中、一人で宿の方へ歩いていく黒いマントの背中が見えた。
(――レオンさん。あの人も、ここの仲間になれたら楽しいのに)
「ユフィさん、レオンのことが気になる?」
リュートさんが、悪戯っぽく瞳を光らせて囁いた。
「え? いえ、そういうわけじゃ……ただ、いつも一人で、なんだか寂しそうに見えて」
「ふーん……寂しそう、ねえ」
全てを見通しているような笑みを浮かべて、エルフの瞳が私をじっと見つめた。
「あの子、ここに留まる理由を無理に作っているねえ。それはアンタかもね」
グリゼルダさんが紫煙をくゆらせながら意味深に笑う。
「え? そんなことないですよ。私、ただの受付ですし……」
「いーや、アタシの目は誤魔化せないね。あの騎士、あんたを見る目が、もう完全に恋する乙女のそれだよ」
「恋する乙女って……レオンさん、男性ですよ!?」
「比喩だよ比喩! でもまあ、そのくらい無防備に惚れてるってことさ」
ブロンさんまで「そうだそうだ! あいつ、お前が見えないところでずっとお前のこと見てるぞ!」と茶化してくる。
(レオンさんが、私を……? そんなわけないない。あんな超絶イケメンは愛でる方が断然いいに決まってる)
正体不明のSクラス冒険者とのロマンスなんて、前世の知識が「ありえない」と警鐘を鳴らしている。それより今は、もっと重要な問題があるのだ。
(明日は、料理当番のおばさんがお休みって言ってたっけ)
そういえば昼間、書類整理で【待機】を使った時、すごく便利だった。
もしかして、料理でも使えるかもしれない。
「そうだ……【待機】を使えば、時間を短縮できるかも」
電子レンジみたいな文明の利器が無いこの世界で、たった一人であの広い厨房を回すのは相当骨が折れるだろう。
前世の知識が囁く。
時間を保留して、後で一気に進めて同時進行。
それができれば、料理の効率が格段に上がる。
(試してみる価値はある)
私は小さくガッツポーズをした。
明日が、楽しみだ。