転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
前世ではブラック企業で身を粉にして働き、過労で倒れた。
この世界では貴族の令嬢として生まれたけれど、役立たずと蔑まれ、実家を追放された。
そして今。
ギルドの受付嬢として、レオンさんという規格外の存在に守られ、愛されている。たぶん。
(ううん。私は、ただ守られるだけの存在にはなりたくない)
レオンさんは「俺がすべて防ぐ」と言ってくれたけれど、私は彼に依存しきったお荷物にはなりたくない。
彼の隣に立って、堂々と「私たち最高のパーティです」と胸を張れるような、そんな自分になりたいのだ。
「嫌です。私、お姫様になるために辺境に来たわけじゃありませんし」
私はパンッ!と両手で自分の頬を叩き、気合を入れた。
「私、プロの冒険者になります! レオンさんに守られるだけじゃなくて、自分の足で立てるように……私の第三の人生を、自分の力で切り拓きたいんです!」
私が力強く宣言すると、グリゼルダさんは口角を上げ、満足そうにニヤリと笑った。
「いい目になったねえ。アタシ好みだよ。冒険者登録証はもう持ってるんだから、あとは実戦経験と技術だ。あんたには一般的な攻撃魔法の適性がないみたいだから、少し特殊な修行が必要だね」
「特殊な修行、ですか?」
「ああ。普通の剣や魔法じゃなくて、もっとズル賢く……いや、効率的に立ち回るための技術さ」
グリゼルダさんは一枚の古い地図を取り出し、カウンターに広げた。
皺だらけの指が示したのは、この辺境の街からさらに奥へ進んだ、深い深い森のエリア。
「最初の修行先として、ここに行きなさい。『魔女の巣』だよ」
「魔女の、巣……?」
「アタシの古巣さ。あそこにいる可愛い後輩たちに、紹介状を書いてやる。あんたのその便利な【接続】スキルと、魔女のいかがわしい……げふん、実用的な知恵を合わせれば、大化けするかもしれないからね」
魔女。
ファンタジーRPGではお馴染みの、怪しげな薬や呪術を操る存在だ。
目の前にいる美魔女の言葉には、とてつもない説得力があった。
一般的な魔法の知識がない私でも、魔女のトリッキーな技術なら、コスパ良く戦う方法が見つかるかもしれない。
『ほほう! 魔女の巣窟か! 面白そうではないか主よ! 我も付き合ってやるぞ、ぴゅい!』
シロがやる気満々で小さな羽をパタパタと羽ばたかせる。
「おう、嬢ちゃん! やる気になったみたいだな! 俺様が直々に稽古をつけてやっても――」
「ブロン、君の稽古じゃユフィさんが冒険者になる前にミンチになってしまうよ。気をつけて行っておいで、ユフィさん」
いつの間にかホールにいた筋肉ダルマのブロンさんと、窓枠に座ったエルフのリュートさんも、笑って背中を押してくれた。
「ガルドさん、グリゼルダさん! 私、修行しに行ってきます!」
自覚したての恋のモヤモヤを吹き飛ばすため。
そして、いつかあの過保護で不器用な最強の騎士様の隣に、自分の足で堂々と立つため。
ギルドの看板娘を一時休業し、プロの冒険者兼魔女見習いを目指す私の『第三の人生』が、今ここから始まろうとしていた。